42救急車のサイレンが止んだ時、一人の看護士が中庭の渡り廊下を走ってきた。彼女は大銀杏の横で患者に付き添っている、婦長である御堂に気が付いたが、声を掛けたのは御堂が先だった。「近藤さん!」「婦長、急患です。交通事故で重傷のようです」彼女はそれだけ言うと頭をペコリと下げ、正面玄関に走り去った。「ゆかり。部屋に戻っていいわ。はいこれ」御堂はポケットらからリモコンバイブのスイッチを出し、ゆかりの手に握ら...