9『アマデウス』を出たゆかりは真っ直ぐ駅に向かい、言われたとおり東口に出た。洗練された西口の雰囲気とは違い、こちら側は昔ながらの落ち着きを感じた。おそらくこの街で生まれ育った人も多いのではないか。マンションやビルがあるわけでもなく、響子のメモのとおり大銀杏はすぐに見つかった。あの銀杏の下の白い建物が、おそらく病院だろうとゆかりは思った。メモには線路沿いを5分ほど歩くと踏切があり、そこを右折しても...