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あなたの燃える手で

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マリアの休日

☃4
箱根の老舗旅館『錦明楼』。
その広い日本庭園には、昼前から降り始めた雪が積もり始めていた。
ようやくパーティーがお開きになり、麗子が女将と共に離れに向かったのは、
午後3時を回っていた。

「それでは氷見川様、離れへご案内致します」
女将は品良く頭を下げると、麗子に和傘を渡した。そして本館の横から一旦外
に出ると、降りしきる雪の中を自分も和傘を差し、庭園の木々の間を足早に歩
いていった。
麗子は敷石の上に付いた女将の足跡をたどり、彼女の後ろを歩いていった。
滝の落ちる音が近づき、ココが本館から見た滝の裏に位置する場所だというの
も頷けた。やがて木々の間を抜けると、古民家風の平屋和風建築が現れた。
2人はポーチで傘を畳むと、女将が前に立って引き戸を開けた。
玄関には2組みの下駄があり、その横に濡れた和傘が2本立てかけられた。
「こちらでございます」
中に入ると、そこは12畳程の広さがあった。室内はすでに暖められている。
落ち着きのある土壁と障子。上を見れば、天井には太い梁が通っている。
部屋の中央には掘炬燵があり、床の間には生け花と折り鶴。庭に出る縁側には
赤い鼻緒の可愛い下駄が置かれていた。
「随分と積もってしまいましたね」
「ホント、困ったわ……」
ココに宿泊した者だけが見られるこの庭も、今や雪に埋もれて真っ白だ。
「やはりお泊まりいただいて正解かと存じます」
「そうね」
「そしてこちらが……」
女将は庭から90度身を翻すと、真横の引き戸を開けた。
「源泉掛け流しの内湯になっております」
内湯の天井にも梁があり、そこから庭に続く戸を開けると、そこは露天風呂に
なっていた。
室内に流れ込む温泉独特の香りが、麗子の鼻をくすぐる。

女将は一通り案内を済ますと、お茶を入れ始めた。
「今、温かいお茶をお入れします……」
「ありがとう……。ねぇ、女将。あなたお名前はなんとおっしゃるの?」
麗子は毛皮のコートをクローゼットに入れると、掘炬燵に足を入れた。
掘炬燵もすでに暖められている。
「美春と申します」
そう言いながら美春は急須を傾け、湯飲みに緑茶を注いだ。
「まぁ、可愛い名前ね」
美春は麗子の隣に密着するように正座をすると、着物から白い綺麗な腕を伸ば
し、湯気の上がる湯飲みを麗子の前に差し出した。
その手を麗子の両手が、包み込むように握った。
「あっ、氷見川様……」
「まぁ、あなたが誘ったんじゃない。そうでしょう?」
「いえ、嬉しくて……」
「うふっ、可愛いコト言うのね。ねぇ、何時頃ココに来れるの?」
「はい、氷見川様のお言いつけとあらば、一応5時になれば……」
「そう、5時ね。わかったわ。楽しみにしてるわよ」
「あっ、は、はい。それでは失礼致します」
美春はその場から立ち上がり、丁寧に頭を下げると静かに戸を閉めた。

ココを離れというのなら、本館は母屋というのが正しいのかもしれない。そん
なコトを考えながら、麗子はお茶を飲んだ。
美春が来る5時までは、まだ90分以上ある。
「温泉でも入ろうかしら? あっ、その前にマリアにメールしとかなきゃ」
麗子は携帯を出すと、マリアにメールを打ち始めた。

>マリア、雪で帰れなくなっちゃたわ。箱根は10センチ位積もってるの。
>車を置いて帰るのも嫌だから、今日はこのホテルに泊まることにしたわ。
>何かあったら連絡して。明日のコトはまた連絡するわね。

麗子はメールを送信すると、内湯に入った。
トロリとしたお湯が、ため息と共に冷えた肌を桜色に染めていく。

「女将の美春さん。あれはかなりのMね。さて、どうやって虐めてやろうか」
麗子は白い湯気のスクリーンに、悶える美春を想像した。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土