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あなたの燃える手で

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Lost Memory

31
リラは更に続けた。
その胸の奥に秘めた想いが、堰を切って溢れ出た。

「アンドロイドによる医療。知識も技術も人間以上。オペ中にトラブル見舞わ
れても人間のように取り乱したりしない。力だって一体で100キロ以上の人間
を運べるわ」
「でも心が、アンドロイドには人の心が無いわ」
「心の無い医者だって大勢いるわ……」
リラは一際声を荒げて言い放った。そして深呼吸するように大きく息を吸い込
むと、ゆっくりと吐き出した。
「そう、所詮はロボット。心を入れることは出来ない。でもそんなことを言っ
ていたら、今の医師不足は解決できないわ。こうしている間にも、あちこちで
助かる命が失われているのよ。医者がいれば助かる命が……」
「……」
「そんなあたしの論文に目を付けてくれたのが、この財団だった。ドリーム
フォックス財団は、あたしの理想とする医療現場を確立するために力を貸して
くれた。そしてその試作機とも言えるのがこのイリメラだったの……」
「イリメラ」
メイは壊れたオモチャのようになったイリメラを見た。
「そんな時、あなたが運ばれてきた。あたしは目を疑ったわ。でも、あなたは
記憶をなくしていた。二人で過ごした時間も、あの愛し合った日々も……」
リラの声が涙声に変わっていく。
「リラ……」
「確かに……、アンドロイドには心が無い。でも、でも愛の記憶をなくした人
間はどうなの?」
大粒の涙がリラの目から溢れ出した。
「だから、だから二人で愛し合ったときのことを思い出して欲しくて……、
あなたに潮まで吹かせたの。あなたが潮を吹く体質なのは知っていたから」
「道理で……、あたしの体のことをよく知ってるハズだわ」
「メイ、お願い。力を貸して……。あなたの開発したコンピューター言語なら優しさを……、人の心をプログラム出来るわ」
リラがメイに歩み寄った。真っ赤な目でリラがメイを見つめる。
「それが……あの雨の日……、話たかったこと……」
「そうね……、そんなアンドロイドが沢山いれば……、あなたの両親も……。そしてこれからも、きっと多くの命が助かるわ」
メイの目からも一筋の涙がこぼれ落ちた。
リラはメイを抱きしめ、唇を重ねた。

キス……。その瞬間。

メイは大きな優しさと安心感に包まれた。それは暖かな真綿のような津波。
脳裏に稲妻が光り、そしてメイは今度こそ全ての記憶を取り戻した。
リラと過ごしたあの日々も……。
彼女の言葉に嘘はなかった。

唇を離すともう一度、今度はメイから唇を重ねた。
そのままメイがリラをベッドに横たえた。
「メイ……、あたしを……許してくれる?」
上になったメイを、リラが涙を湛えた瞳で見上げた。
「あたしは昔と少しも変わってないわ。それはこれからも……」
メイは優しく微笑むと唇を寄せ、リラの首筋にキスを繰り返した。
リラの両手がメイの背中をきつく抱きしめる。
「エクスタミンの効果は1時間。でもあたし達は……」
「ずっと一緒よ、メイ。もう何処にも行かないで」
「もう1度作りましょう。2人で……、IRIMERAを」
「メイ……、ありがとう」

2人はもう一度長いキスを交わした。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土