BEACH GIRLS
秘密の砂浜 PM 12:10
車から波打ち際までは20メートル程、海岸の両翼は50メートルもない小さな浜辺だった。
焼けた砂に足を取られながら、3人は海に向かって歩いた。
海に近付くにつれ、夏を奏でる波の音が静かに響いてくる。
マリアは両手に大きなバッグを、明日香はクーラーボックスを、響子は両手で白いパラソルを運んだ。
「この辺にしよう……ねっ!」
砂浜の中程まで来ると、陣地を取るように響子はパラソルを立てた。
真っ青な空を白いパラソルが丸く切り取る。その下にカラフルなシートを敷くと、3人は腰を下ろした。
「とりあえず泳ごうか?」
響子は立ち上がると、Tシャツとミニを脱ぎ着替えだした。
「えっ、もう? とりあえず何か食べよう、お菓子はぁ?」
「マリア~、せっかく海に来たんだからさぁ。さっきもお菓子食べたでしょう」
「もしかしてマリアさん、泳げないとか?」
明日香も立ち上がり、デニムのショートパンツを下ろし始めた。
「えっ? なっ、何で……?」
「だってそれ、浮き輪ですよねぇ」
明日香はまだ膨らましていない、折りたたまれた浮き輪の入ったマリアのバッグを指差した。
「こっ、これは遊ぶために持ってきたの。別に泳げるよ……泳げるんだから」
「とにかくさぁ、水着になろうよ! ねっ!」
響子はさっさと黒いビキニ姿になると、マリアの腕を取り立ち上がらせた。
「きゃー! 響子セクスィ~! マリアさんも着替えましょう」
「うっ、うん」
マリアもお菓子に未練を残しながら、渋々ピンクのワンピースを脱ぎ始めた。
「わぁ~! マリアさん白いですねぇ、それにとっても綺麗な肌」
「マリアのご主人様の麗子さんはねぇ、エステ業界の大ボスなんだよ。だから高級ローションとか使い放題なんだよ。ねっ、マリア」
「そんなコトないよ響子。それに大ボスって……」
「へぇ~、そうなんですかぁ。だからこんなに綺麗な肌なんだぁ」
明日香は七色のラインが入ったビキニに着替えると、マリアの二の腕を撫でた。
「そんなことないよ、明日香ちゃんだって綺麗だよ」
「先に行ってるよー!」
響子が海に向かって砂浜を裸足で走り出した。
「あっ! あたしもっ! 明日香、いきまーす!」
響子の跡を追って明日香が走り出した。
「もう、ホントにせっかちなんだからぁ!」
マリアは着替えを済ませると浮き輪を膨らました。その浮き輪を右手に持つと砂浜に裸足の足を踏み入れた。
「アチッ! アチッ! んん~……もうっー!」
砂の熱さに負けたように、マリアも海に向かって一直線に走り出した。
マリアのビキニは、白地にピンクのグラデーションのハイビスカスがデザインされている。そのハイビスカスが青い海に溶け込んでいった。
腰まで海に浸かり、大はしゃぎする3人の声が青空に吸い込まれていく。
浮き輪を取り合いながら一緒に波をジャンプする響子と明日香。
しかしマリアが飛び遅れ、フラついて海中に没した。
黒い髪を背中に張り付かせ、両手で目を押さえながらマリアが水面に現れた。
「あぁーん、しょぱ~い……」
「もう、ドジッ!」
「あっ! また大きいのが来ましたよ。マリアさん」
「えっ? キャー!……」
再び海中に没するマリア。響子と明日香は髪も濡れていない。
「やっぱりマリアはコレ、持ってる方がイイみたい……はいっ!」
響子が浮き輪をマリアに押し付けるようにして渡した。
「別にこんなの無くても平気だもん」
「持ってた方がイイですよ。ほらっ、また来た!」
「キャー!……」
幾重の白い波が、彼女たちと戯れながら通り過ぎていった。