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あなたの燃える手で

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囁く家の眠れる少女

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森崎あんずの所属する、『アマテラスと十二人の使徒』は、来月から全国ツ
アーが始まる予定だ。
リーダーである『森崎あんず』は、それまでに不眠症を治そうと、ネットで
見つけた『花町催眠クリニック』を訪れた。
前回のテスト催眠で、十分にかかりやすい体質と見られたあんずは、2回目
の診察である今日、予約通りにクリニックにやってきた。

あんずが院内に入った時、患者は彼女一人だった。これはあんずに悪戯をす
るために、1ヶ月も前から他の患者の予約を調整したものだった。
「来ましたね、先生」
「あなたはあんずちゃんが催眠にかかってから来てね。催眠を解いた後、あ
なたの記憶が無いようにしておくから」
「はい、わかりました」
「それじゃ、始めましょう……」
それから数分後、待合室のあんずは名前を呼ばれ診察室に入った。
すると前回来た時にはなかった簡易ベッドが、壁に張り付くように置かれて
いる。あんずはそれに気が付いた。

「美穂先生こんにちはぁ、よろしくお願いしまぁす」
「こんにちは……。どう? あんずちゃん。相変わらず眠れない?」
「そうですねぇ、相変わらずですぅ」
「そう、それじゃ、今日から本格的に治療していきましょうね」
「はい。よろしくお願いしまぁす。先生、ベッドがあるけど、この間来た時
にはなかったですよえぇ」
「気がついた? これはね、催眠で眠りに入って、普段の寝不足から深い眠
りに入る可能性があるの。その時に起こすこともできるんだけど、できれば
起こしたくないし。ベッドがあればそのまま寝てしまえるでしょう」
「あぁ、なるほど、そういうコトなんですね……」
「それでね、これは確認なんだけど……、今日、時間は大丈夫?」
「はいぃ、大丈夫ですけどぉ……?」
「そう、よかったわ。そういうわけだから時間が許す限りゆっくりしていっ
てもらおうかなって」
「ありがとうございますぅ」
「じゃ、目が覚めるまで起こさないってコトで、いいわね」
「はい、いいですぅ」
「それじゃ、ベッドに座って……」
「はい」
あんずが座ると、美穂は自分の椅子をあんずの近くに移動させた。
「始めるわよ……」
美穂はいつものガラス玉をポケットから取り出した。

細い鎖の先にぶら下がった涙型のガラス玉が、時計回りにクルクルと回転し
始めた。やがて回転が止まる頃、あんずは深い靄に包まれていく。
「あんずちゃん、あんずちゃん」
濃霧の中を歩くあんずに、どこからか自分を呼ぶ声が聞こえる。声のする方
へと歩いていくと、霧の中に人影が見える。
「美穂、先生……?」
「そうよ、あたしよ」
「先生どこにいるの? 霧が濃くて、真っ白でなんにも見えない」
「大丈夫よ、霧はどんどん晴れていくわ。ほらっ、どんどん」

やがて晴れていく霧の中で、人影は美穂の形をとり始めた。


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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土