白い魔女 8
18
完全にM女になったと思ったあたしだったが、あたしにはSの血も流れてい
た。それを知るのは、大学に進学してからだった。
あたしが入学したのは医療大学だ。
でもその大学は家から通うには遠すぎる為、あたしは一人暮らしを始めた。
せっちゃんのおばさんとは会えなくなってしまうが、それも仕方がない。
そのことについては彼女もわかってくれた。
あたしが一人暮らしを始めたアパートは、『夢の森』という駅から歩いて10
分程のところにある、小ぢんまりとしたアパートだった。
ココに決めたのは、特別なにが気に入ったというわけでもない。大学に通い
やすいことと、駅から近いことが決め手だった。
大学に入るとすぐ、あたしには『中園つぐみ』という友人ができた。
彼女はあたしより少しだけ背が高く、髪はフワフワの内巻きで、胸は同じく
らい、でも腰のくびれは負けている。スラリと伸びた足は白くてツルツル
で、ナチュラルメイクの顔はどちらかと言うと和風の顔立ちだ。
きっとこんな人が、白衣の天使と呼ばれるようになるのだろう。
彼女とは何故か顔を合わせることが多く、日によっては偶然に駅で会って、
そのまま一緒に大学まで歩いた日も数知れない。
とにかく気の合ったあたし達は、駅近くの商店街にある、『アマデウス』と
いうカフェで待ち合わせすることも多かった。
つぐみは従順で我儘を言わない子だった。
根っからのメイド気質とでも言うのだろうか。あたしの提案に必ずと言って
いい程賛成し、待ち合わせの時間には必ず先に来ていた。
SかMでいえば120%Mだ。
そんなつぐみを見ていると、なぜかあたしの中でSの血が騒ぎ出す。きっと
あたしを見るせっちゃんのおばさんも、こんな気分だったのかもしれない。
でもつぐみが女同士のソレをどう思うか、ましてやおばさんとあたしのよう
な関係になれるとは、その時は夢にも思わなかった。
でも二人がそんな関係になるきっかけは、意外に早く訪れた。
それはある日、つぐみとアマデウスで待ち合わせた時のことだった。
二人の頼んだコーヒーを、日本人離れした顔をしたママさんが持ってきたと
きに言った一言、その一言が全ての始まりだった。
「あらっ、なんだか二人お似合いねぇ……」
「えっ、そんなぁ、女同士てお似合いって……。ねぇ、つぐみぃ」
「えっ? うっ、うん……」
「あらぁ、どしてぇ? 女同士だってそういうの、アリでしょう?」
「そういうのって?」
「レ・ン・ア・イ、ってコト……」
女同士の恋愛、正直あたしに抵抗があるはずがない。問題はつくみだ。
でもつぐみの口からは、思いもしない意外な言葉が発せられた。
「そ、そうですよね。女同士の恋愛だってアリですよね……」
「そうよぉ、絶対アリよぉ」
ママさんはそう言うと、厨房へと戻っていった。
「チョットつぐみぃ、あんた……」
「あっ、ううん。もし雪絵に抵抗があるなら、あたしはいいの。だって誰も
が受け入れられるコトじゃないし……、だからあたしはいいの」
「違うよぉ、そうじゃなくて……、あたしも、なの……」
それは自分でも思いがけないカミングアウトだった。
完全にM女になったと思ったあたしだったが、あたしにはSの血も流れてい
た。それを知るのは、大学に進学してからだった。
あたしが入学したのは医療大学だ。
でもその大学は家から通うには遠すぎる為、あたしは一人暮らしを始めた。
せっちゃんのおばさんとは会えなくなってしまうが、それも仕方がない。
そのことについては彼女もわかってくれた。
あたしが一人暮らしを始めたアパートは、『夢の森』という駅から歩いて10
分程のところにある、小ぢんまりとしたアパートだった。
ココに決めたのは、特別なにが気に入ったというわけでもない。大学に通い
やすいことと、駅から近いことが決め手だった。
大学に入るとすぐ、あたしには『中園つぐみ』という友人ができた。
彼女はあたしより少しだけ背が高く、髪はフワフワの内巻きで、胸は同じく
らい、でも腰のくびれは負けている。スラリと伸びた足は白くてツルツル
で、ナチュラルメイクの顔はどちらかと言うと和風の顔立ちだ。
きっとこんな人が、白衣の天使と呼ばれるようになるのだろう。
彼女とは何故か顔を合わせることが多く、日によっては偶然に駅で会って、
そのまま一緒に大学まで歩いた日も数知れない。
とにかく気の合ったあたし達は、駅近くの商店街にある、『アマデウス』と
いうカフェで待ち合わせすることも多かった。
つぐみは従順で我儘を言わない子だった。
根っからのメイド気質とでも言うのだろうか。あたしの提案に必ずと言って
いい程賛成し、待ち合わせの時間には必ず先に来ていた。
SかMでいえば120%Mだ。
そんなつぐみを見ていると、なぜかあたしの中でSの血が騒ぎ出す。きっと
あたしを見るせっちゃんのおばさんも、こんな気分だったのかもしれない。
でもつぐみが女同士のソレをどう思うか、ましてやおばさんとあたしのよう
な関係になれるとは、その時は夢にも思わなかった。
でも二人がそんな関係になるきっかけは、意外に早く訪れた。
それはある日、つぐみとアマデウスで待ち合わせた時のことだった。
二人の頼んだコーヒーを、日本人離れした顔をしたママさんが持ってきたと
きに言った一言、その一言が全ての始まりだった。
「あらっ、なんだか二人お似合いねぇ……」
「えっ、そんなぁ、女同士てお似合いって……。ねぇ、つぐみぃ」
「えっ? うっ、うん……」
「あらぁ、どしてぇ? 女同士だってそういうの、アリでしょう?」
「そういうのって?」
「レ・ン・ア・イ、ってコト……」
女同士の恋愛、正直あたしに抵抗があるはずがない。問題はつくみだ。
でもつぐみの口からは、思いもしない意外な言葉が発せられた。
「そ、そうですよね。女同士の恋愛だってアリですよね……」
「そうよぉ、絶対アリよぉ」
ママさんはそう言うと、厨房へと戻っていった。
「チョットつぐみぃ、あんた……」
「あっ、ううん。もし雪絵に抵抗があるなら、あたしはいいの。だって誰も
が受け入れられるコトじゃないし……、だからあたしはいいの」
「違うよぉ、そうじゃなくて……、あたしも、なの……」
それは自分でも思いがけないカミングアウトだった。