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あなたの燃える手で

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嗤うペルソナ


堕天楼のママ、吉乃。
年の頃は40歳を超えたばかりか。その自信に満ちた立ち姿は、どこか風格さ
え感じる。そんな彼女の今夜の装いは和装だった。
明るい灰色の生地に、金色を思わせる帯を締め、髪をアップにまとめたせい
か、大きな目がわずかにつり上がった印象になっている。
着物の上からでもわかる大きな胸、細い首筋に揺れる後れ毛。袖から覗く腕も
細く白い。何事も見逃さないような大きな目は、猛禽類のそれさえ感じる。

「生贄って、どういう意味ですか……?」
「あらぁ、言葉通りの意味よ。今からあなたは、皆様に楽しんでいただくため
の生贄になるの。そうねぇ、お人形といってもいいかしら……」
「えっ? 何ですかそれ。そんなの聞いてません」
「大丈夫だよ麻里奈ちゃん。女しかいないんだから」
そう言った朱音に続いて、紫音が言った。
「そう、ここはここは男子禁制。妊娠することもない」
「でも、だからって」
「ほらっ、あなた達、さっさと準備をして」
「はい」
「それじゃ麻里奈ちゃん。ちょっとバンザイして……」
「えっ……?」
戸惑う麻里奈をよそに、朱音はその両腕を頭の上に掲げるように持ち上げた。
するとその両手首に、黒い手枷が巻きついた。
「あっ、いや……」

いつのまにか、いや最初からか。
暗い天井から垂れ下がった鎖。その先に手枷lが取り付けられている。その手
枷が、紫音によって麻里奈の両手首にしっかりと嵌められた。
「いいかしら?」
「はい、どうぞ」
吉乃が少し離れた場所で、これも天井からぶら下がったコードにつながったス
イッチを押した。すると手枷の鎖が上に巻き取られ、麻里奈の両腕はスルスル
と持ち上がっていく。
「あっ、いやっ……。なに?」
ノースリーブの脇が完全に丸見えになり、ハイヒールを履いた足はあっという
間に爪先立ちになってしまった。ドレスでのその姿は、まるでバレエダンサー
のようだ。

「まぁ、まるで踊り子のようねぇ」
「ホントですね、悪くない眺めです」
「麻里奈ちゃん、なんかに似合ってるわよ」
「それじゃ、そろそろ照明を変えましょうか」
吉乃が小さなリモコンを使って、照明の当たり方を変えた。
客席の照明が消え、天井の照明がついた。
すると麻里奈は、ここが一段高くなっていることに初めて気がついた。
そして客席には30人程の客がいた。しかし驚くべきは、その客が全てペルソ
ナ、仮面を被っていることだった。ペルソナはどれもベネチアンマスクを思わ
せるデザインで、猫、トラ、ライオン、悪魔に天使。極彩色の鳥や青い涙を流
したピエロなど、色々な種類があった。
そんなペルソナで素顔を隠した集団が、今自由を奪われた自分を見つめてい
る。それが好奇の目であることは、仮面越しにもわかった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土