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あなたの燃える手で

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感悶寺 奥の院

十八
あたしの顔は夢天さんの両手に挟まれ、濡菊さんの顔は花壺さんの両手に挟ま
れています。それぞれ挟まれた顔は、キスをするように押し出され、もうその
間隔は二~三センチしかありませんでした。

「いいですよ美鈴さん。キスしても」
「えっ……」
「ほらっ、もう唇はすぐそこ。舌を伸ばせば届きそうですよ」
確かに頭は挟まれていても、舌は伸ばせます。そしてそれは本当に届きそうな
ほど、すぐそこにあるのです。でも……。
「でもそんなことをしたら……」
言葉ではそう言っても、本当の気持ちは……。
"もしそんな気持ちになったら、おしゃって下さいね" さっきの夢天さんの言
葉が脳裏に蘇ります。
"その気持ちの変化こそが、色魔が炙られ表面に出て来た証拠なのです" そう
なら、本当にそうなら、あたしの中の色魔は、かなり表面に出てきているとい
うことになります。
これが "そんな気持ち" 。そう、あたしはそんな気持ちになっていたのです。
「いいのですよ。素直になって、今の本当の気持ちを、さぁ言うのです」
僅かな沈黙が、あたしに勇気を出すチャンスをくれました。
「は、はい……。したいです。あたし、キスがしたいです」
「そう、それでいいのです。さぁ、舌を伸ばしてごらんなさい」
あたしは恥ずかしさからか、目を閉じて舌伸ばしました。そうすればすぐに濡
菊さんの舌に触れるものと思って……。
でも、その瞬間はなかなか訪れません。あたしは舌を一度引っ込め、もう一度
伸ばしてみました。それでも濡菊さんの舌に触れないのです。
あたしが目を開けてみました。すると濡菊さんは舌を伸ばしていません。とい
うより、あたしが舌を伸ばすと彼女が舌を引っ込め、あたしが引っ込めると、
今度は彼女が伸ばすという、まるでシーソーゲームのような繰り返しがそこに
生まれていたのです。
「ほらっ、もっと舌を伸ばさないと届きませんよ」
「で、でも……」
その時、あたしの頭が押され、少しだけ濡菊さんに近づきました。あたしは当
然のように舌を伸ばしました。でも、今度は濡菊さんが舌を出さないのです。
彼女の目は、トロンとしたまま、それでもしっかりとした光をその瞳に湛えています。
「あぁ、濡菊さん、どうして……?」
濡菊さんの唇が、酷薄な嗤いを浮かべました。
「どうしたんです? 美鈴さん。あたしとキスしたいんでしょう?」
「は、はい……」
「だったらもっと頑張って……」
頑張るもなにも、吊られてつま先立ちになり、頭を押さえられているあたしに
は、もうこれ以上どうすることも出来ません。
「ぬ、濡菊さんも舌を……」
「うふふっ、あたしもキスは大好きよ。でも今はしたくないの」
「えっ……」
キスをしたいのはあたしだけ。濡菊さんがどう思っているかなど、考えもしま
せんでした。あたしの気持ちはそんな一方通行な想いだったのです。
「でも、だったらどうして舌を伸ばしたの?」
「それはねっ、美鈴さんをその気にさせる為。色魔を炙り出す為よ」
色魔炙り。確かそんな名前を、さっき夢天さんが言っていました……。
確かに今のあたしは、体の芯からムラムラとしたものが湧き上がっています。
これが色魔が炙り出された、ということなのでしょうか?
「どんな気分ですか? 美鈴さん……」
夢天さんが、ニヤリと嗤ってあたしを見ています。それは聞くまでもない質問
で、分かりきった答えしかありません。
「凄くイヤラシイ気分。淫らになりたい気分では……?」
「そ、それは……。は、はい……、そうです」
あたしは目を逸らして答えました。
「いいのですよ、それで……。人目もはばからず乱れたい。思いっきりドロド
ロになって快楽を貪りたい。のではありませんか?」
「はい、あたしも、感じたいです」
「そうですか。それではそのように致しましょう……」
また夢天さんがニヤリと嗤いました。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土