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あなたの燃える手で

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ピエロの方程式


黒い銃口から発射された無数の弾丸は、爆音と共に宗一郎と10人の職員達を
あっという間に穴だらけにした。
再び沈黙が訪れると、女が黒いブーツで硝煙の香る研究室を音もなく歩いた。
そして足元から聞こえるうめき声に向けて引き金を引くと、拳銃を胸のホルス
ターに戻した。
「任務完了、C4を10分後にセット」
男が白い粘土のようなプラスチック爆弾をスーパーコンピューターに貼り付け
ると、それに信管を差し込み、起爆スイッチのタイマーを10に合わせた。
「爆破準備よし……」
「ただちに撤退」
彼女らは走って屋外に出ると、車を急発進させて研究所を後にした。
10分後。バックミラーに映った白煙を、振り返る者は誰もいなかった。


翌日は、新聞TVがこぞってこのニュースを取り上げた。
「昨日爆破された『神宮寺物理学研究所』から、11人の遺体が確認されまし
た。遺体は神宮司宗一郎さん本人と、10人の研究所職員と見られています。
なお、ただいま入りました情報によりますと、犯行声明が出された模様です。
犯行声明を出したのは、『CHIMERA EYE』(キメラアイ)と呼ばれる国際犯
罪テロ組織です。それではここで、その声明文の内容を全て読み上げてみたい
と思います。
"我々は神宮寺のコンピューターにハッキングを繰り返し、時空方程式の存在
を知った。そしてついにそのワープ理論、及び装置のデーターを入手した。
我々は高速を越える移動手段を手に入れたのだ。コレが意味するトコロは、も
はや説明不要だろう" 」
女性アナウンサーはカメラに1度視線をやると、再び原稿に目を戻した。
「 "このワープ装置が完成次第、我々は活動を再開する。我々は何処にでも現
れ、世界中の何処へでも飛べる、それも光より早くだ。我々の要求を受け入れ
ない組織、機関、そして国々でさえも、我々は躊躇無く爆破するだろう" 。
そして彼らは最後にこう結んでいます。 "そして我々は神となるのだ" 。
以上が『CHIMERA EYE』の犯行声明文です」
女性アナウンサーは顔を上げると、隣の男性アナウンサーと目を合わせた。


研究所が爆破されてから1ヶ月が経った。
宗一郎の一人娘『神宮寺ミサキ』は、『時任女子学園高校』に通っている。
期末試験最終日である今日、ミサキは親友の『安達サクラ』を誘い、打ち上げ
と称して、学園近くの『23℃』というカフェに立ち寄っていた。

「ミサキ、ミサキ、ねぇ、どうするの?」
「どうするって言われても……」

「やっぱり学校はおばあちゃん家から通うことにしたわ」
「うん。そうだね……」
「取り敢えず卒業まではそうして、大学からはどっかで一人暮らしかな」
「そっかぁ、まっ、取り敢えずはそんなトコロだね。うん、そうだよ。それし
かないもん、うん、そう、そう、判る判る」
「もう、サクラ……。真面目なんだかフザケてるんだかワカンナイよ」
「ねぇ、トコロでさぁ、今度来たあの新しい先生……」
「あぁ、女の?」
「うん、どうやらあの人、数学みたいだよ。それにハーフなんだって」
「へぇ~、ハーフで数学かぁ。何か嫌な予感するなぁ~。ハーフはともかく」
「ミサキ数学嫌いだもんねっ」
「うん。特に方程式とかさ、もう大っ嫌い……。ああゆう女ってさぁ、明日い
きなり小テストとかって、そういうえげつないコト平気でするんだよねぇ」
「うん、そう、そう、判る判る。そういうタイプだよ、あれは……」
「あぁ、卒業まで後数ヶ月、こんな憂鬱な日々を過ごさねばならぬとは……」
「嫌じゃ、嫌じゃ、わらわは嫌じゃ……」

そんな2人のやりとりを、カフェの奥から切れ長の目が見つめていた。
「あれが神宮寺宗一郎の一人娘、神宮寺ミサキ……」

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土