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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

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刑事部屋に戻ると、カンナは配られた資料にもう1度目を通した。
「へぇ~、凄いですねこれ。ムーンライトにやられた美術館って、どれも一流
中の一流じゃない」

2013年。5月1日・七海美術館(日)『ルパンの涙』に予告状。
2012年。5月1日・犯行なし
2011年。5月1日・犯行なし
2010年:5月1日・七海美術館(日)『バビロンの乙女』
2009年。5月1日・アルコ・ピナコテーク(独)『聖ジャルバジャンの死』
2008年。5月1日・ドレスデン美術館(独)『バイオリンを弾く天使』
2007年。5月1日・ニューヨーク近代美術館(米)『パンを焼く女』
2006年。5月1日・ボストン美術館(米)『青いカフスのシャツ』
2005年。5月1日・メトロポリタン美術館(米)『ダイアナのウインク』
2004年。5月1日・ベルリン美術館(独)『笛を持つキューピット』
2003年。5月1日・大英博物館(英)『最初の審判』
2002年。5月1日・ベルサイユ宮殿美術館(仏)『パリの道化師』
2001年。5月1日・オルセー美術館(仏)『ビーナスの衣替え』
2000年。5月1日・ルーブル美術館(仏)『シモーヌの微笑み』

「犯行は全て5月1日。犯行予告は当日の2週間前には届いてる。赤い洋封筒
にいつもの文言。"十分な警戒をオススメする"。そして警察の警戒網をかいく
ぐって完璧なまでに仕事をこなす。でも去年と一昨年は何もしていない。どう
してだろう」
そしてカンナは資料を数ページを捲った。
そこには犯行日から2週間以内に、各国へ送られた多額の資金援助の内容が一
覧表になっていた。
「これを見ると竜胆さんが言ったとおり、確かにムーンライトの犯行と各国へ
の資金援助は、その時期がピッタリと重なる。去年と一昨年はどこにもこれほ
どの額の援助はされていない。しかもこの援助によって数万人の子供達の命が
救われている」
その時、ヒロミがカンナの隣に腰掛けた。
「ヒロミさん。これを見ると、やっぱり援助をしていたのは、ムーンライトな
んですよ」
「まだ決まったわけじゃないわ」
「でも……」
「でもなによ」
「その資金援助で、多くの子供の命が」
「だから窃盗を許すの? 誰かを救えば盗みを働いてもいいの?」
「いえっ、別にあたしそんなこと……」
「あたしはねぇ……、絶対許さない。人の物を盗む奴は絶対許さないわ」
「ヒロミさん……」
そう言ってヒロミは、刑事部屋から駆け出していった。

「どうしたんだろうヒロミさん。何か泥棒に恨みでもあるのかな?」
一人取り残されたカンナの肩に、後ろからそっと手を置く者がいた。
「竜胆さん……」
「ヒロミの両親はね、居直り強盗に殺されたの」
「えっ……?」
「彼女がまだ6歳時にね」
「それでヒロミさん……」
「そう、彼女が刑事になったのも、物を盗む人間が許せないのも、全てその時
からのことよ」
「そうだったんですか……」
カンナは静かに資料を閉じた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土