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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

10
「興味深い事実とは、そこに配った資料にもあるとおり……」
そう言われて、カンナは初めて資料を捲った。
最初のページには、ムーンライトの犯行履歴などが書かれている。
「あぁ、すみません。5ページ目の、資金援助のページを開いて……」
会議室内に、紙を捲る音が重なった。
カンナも数ページ後にある、資金援助のページを開いた。
みんながページを開くのを待って、竜胆は言葉を続けた。
「月光が犯行を犯した後、数日してかならず、複数の国の恵まれない子供達に
多額の資金援助が届いている」
「恵まれない子供達に資金援助……」
「そうだ。この援助により、多くの恵まれない子供達が救われている」
カンナは赤いフレームの中で眼を細めた。
「これは必ずしも、月光と関係があると確認されたわけではない。しかし奴の
犯行のタイミングと重なっているのもまた事実だ」
「まるで現代版ネズミ小僧だな……」
そんな誰かの呟きが、竜胆にも聞こえたのかもしれない。
「よく言えば義賊……、かもしれない。しかし我々は、奴を一犯罪者として検
挙することに迷いを持ってはならない。怪盗ムーンライトを検挙する。コレこ
そが我々の崇高なる使命であり、義務なのだ。いいな!」
「はい!」
20人が一斉に返事をした。
「なんだか気合い入りましたね、ヒロミさん」
カンナがコッソリと言った。
「へぇ、カンナ。アンタもそんなことあるんだ」
「ありますよぉ、そりゃ……。新米とはいえ刑事ですから」
「そうは見えないけどね」
「えっ、ひっどいなぁ~もう、ヒロミさんってば~」
「ほらっ、そこ。カンナ! またお前か」
「すみません」
カンナはペコリと頭を下げた。
「会議中は私語を慎め。常識だろう」
「はい……」
「この資料は各自、目を通しておくように」
「はい……」
「よし。それではコレより当日の流れ、詳細な人員配置について話す。まず
我々は10名ずつの2班に分かれ……」
竜胆より当日の予定が伝えられると、約3時間の会議は終了した。
その後は班ごとに詰めが行われた。


会議室を出て、カンナとヒロミは廊下を歩いていた。
「ふぁ~、怖いですねぇ、竜胆さん。あれでホントに女ですかね。名前だって
晶なんて男みたいだし……。もしかしたら竜胆さんって男なんじゃ……」
「アイツが義賊なんて……」
「えっ、竜胆さんが義賊……?」
「ばか! ムーンライトの話だ。やっぱり……、ピンとこないんだよねぇ」
「結構いい人かもしれないですね。ムーンライトって」
「アンタ、そんな情にほだされてると……。足元掬われるよ」
「でも人を殺さないところとか、ルパンみたいじゃないですか……」
「ならこっちはシャーロック・ホームズになって、アイツを捕まえてやるわ」
「ヒロミさんにホームズはどうかなぁ?」
「なんだと、今なんつった? えっ? カンナ」
ヒロミはゲンコツをカンナの頭の上に構えた。
「あっ、ごめんなさぁい。嘘ですぅ、嘘嘘」

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土