31帰宅する日の朝。麗子は朝風呂に行くことにした。時計の針はまだ七時。チェックアウトは十時だ。時間はたっぷりある。隣で眠る良子を起こさないように、麗子はそっと部屋を出た。階段を下り一階へと出ると、朝食の香りが鼻をくすぐる。朝の静かな廊下はどこか清々しい。少し冷たい空気の中、麗子は早歩きで大浴場へと歩みを進めた。途中、親子ほど年の違いそうな二人連れの客とすれ違った。見た目は親子だが、その手は恋人握りに...