【8】優しく重なった佐智枝さんの唇、その感覚がフワッと消えました。「絢音お嬢様」その言葉に、あたしは目を開きました。「お体をもっとご自愛ください……」「えっ……」「ファーストキスはあたしとでしたが、ここから先はいつか現れる人と……」「佐智枝さん……」あたしは肩すかしを食ったような気分でした。でもコレで良かったのかもしれません。だってあたし自身、内心ホッとしていたのですから。それから1週間ほど経ったある日。...