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あなたの燃える手で

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ざくろ荘物語

16
「結構久しぶりじゃない? すみれちゃん」
林檎は立ったままコートを脱ぐと、それを隣に椅子に掛けた。
「はい、そうですね」
林檎はようやく座ると、すみれの前に置かれたコーヒーカップに気が付いた。
「あれっ、すみれちゃん……。ケーキは?」
「頼んでないの……」
「えっ、マジで……。そう。それじゃ、コーヒーとモンブランを二つ」
「はい、コーヒーとモンブランを二つですね」
バイトの子は、また厨房の奥へと消えていった。

「ねぇ、林檎さん」
「なぁに?」
「隣の桃子……、いるでしょう?」
桃子の部屋は102号室だ。101号室のすみれと103号室の林檎は、どちらも桃
子は隣の住人というコトになる。
「あぁ、隣の桃子ちゃん? あの子がどうかしたの?」
「あの子、ノンケみたいなんですよね……」
「やっぱりぃ? あたしもそうかなぁ~って思ってた。たまに顔合わせて挨拶
なんかしたときに、なんか違うなぁ~って……」
林檎は既に社会人でエステシャンをしている。歳はすみれ達より7つ上の25
歳だ。しかしその話し方は、18歳のすみれの方がよっぽど落ち着いている。
「それで……?」
「それでっていうか……、その……、あのぅ……、あたし……、あの子……、
チョットいいかなって……、思ってるんですけど」
「ははぁ~ん、お主、恋いに落ちたな」
「はぁ、まぁ、そうも言いますけど」
「しかし相手がノンケだと……」
「えぇ、まぁ、そういうワケです」
「それでこの林檎姉さんに相談ってワケですか。そうですかそうですか」
「あのう、こんな相談してもぉ……」
「いやいやそんなことはない。この林檎姉さんが必ずや彼女のハートを射貫
いてご覧に入れよう」
「いや、射貫きたいのはあたしなんですけど……」
「判ってますって……。もちろんあたしは恋のキューピット役」
「大丈夫かなぁ~?」
「大丈夫、信じなさいって。あたしも桃子ちゃんと話くらいはしたコトあるし
さ……、まぁ、チョットだけだけどね」
「はぁ……、やっぱりあたし自分で……」
「お互い知らぬ顔じゃ無し、お主の気持ち、しかと伝えてみせようぞ」
「あのぅ、さっきからそれ誰です?」
「いいから、いいから、あたしにおまかせあれ、すみれ殿」
「だからそれ……」
「なんなら、今から彼女の部屋に行ってもよいぞ」
「えっ、えぇ~……、今からぁ~?」
「うん、善は急げっていうし」
「でもぉ~……」
「なにがでもぉ~よっ」
「だってぇ~」
「えぇい、煮え切らなぬ奴め。こうなれば拙者一人で」
「モンブランでぇ~す」
立ち上がらんばかりだった林檎の前に、モンブランが置かれた。
その瞬間、林檎の体に急ブレーキが掛かった。
「まぁまぁ林檎さん、ここはケーキでも食べて。それとも武士は食わねどなん
とやらですか。いらないならあたしが片付けますけど?」
「いや、いただこう。腹が減ってはなんとやらというからな」
すみれはそんな林檎が可愛く見えて、クスリと笑った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土