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あなたの燃える手で

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眠れない羊たち

第3話:海百合荘 1
「すいませぇ~ん」
真紀は海百合荘の玄関から声を掛けた。すると奥からエプロン姿の女将らしき
女性が、大きな胸を揺らしながら小走りであらわれた。
「はい、いらっしゃいませ。えぇ~っと……」
「予約した夏宮ですけど」
「あっ、夏宮様、お早いお着きでしたねぇ」
「えっ、えぇ……」
女将は大きな瞳で真紀を見つめた。その視線はネットリと絡みつくようだ。
「皆さん大抵は表の方に、あっ、表っていうのは島の北側のことで、この辺は
裏になるんですけど」
「えぇ」
「食堂やお土産は表の方にお店が集まってますんで、皆さんそちらを回ってか
からいらっしゃるんですよ。さぁ、どうぞお上がり下さい。お部屋はご用意し
てありますので……」
「あっ、はい。おじゃまします」
真紀は靴を脱ぐと、部屋へと案内する女将の後ろをを歩いた。

そんな2人の背中を見つめる二つの目。しかし真紀はそれには気付かず、女将
に案内されるまま2階へと階段を上がった。

「さぁ、どうぞ。こちらになります」
通された部屋は、"白百合の間" と書かれた和室だった。窓からは光る海面が水
平線まで一望でき、そこには数隻の漁船がシルエットになって浮かんでいる。
「わぁー、キレイな海」
真紀は床の間の脇にバッグを置くと、暫し青い海に見とれた。
「えぇ、本当に。この島の自慢の海ですよ」
後ろにいた女将の手が、真紀の両肩にかかった。
フワリと置かれた手は心なしか、自分の肩を揉んでいるようにも感じる。
「お疲れでしょう? 大きなバッグを持ってここまで……」
その指先が微妙にうなじをくすぐった。
「あっ……」
「あらっ、どうかしました?」
「いっ、いえ、別に……」
真紀は後ろで笑う女将の顔を想像した。しかし抵抗はしない。どちらかといえ
ば、こういうコトは嫌いではなかった。そう、真紀は男に興味がないのだ。
別に辛い体験やトラウマがあるわけではない。彼女にとってそれは生まれ持っ
た感覚であり、ごく自然な性癖といってよかった。それ故か、同じ匂いを持つ
同性には、天性のアンテナが敏感にそれを見分けた。
真紀は肩に置かれた女将の手に、自分の手を重ねるとそれをそっと握った。
「まぁ、夏宮様ったら……、いいんですか? こんなあたしで……」
「どうして……?」
真紀は女将の手を自分の胸へと導いた。
「そんなコトして。あたし、勘違いしちゃいますから」
しかしその手は、真紀の胸をそっと撫でさする。
「やっぱり女将さん……。そうなんだ」
真紀は女将と向かい合った。
「あらっ、夏宮さんだって……。一目見た時からそうだと思いましたけど」
「判る人には判るんですね。こういうのって……」
「真紀さん。それではまた後ほど……」
「はい……」
「それから、あたしはここの女将をしております、『南百合子』といいます」
「それで海百合荘?」
「えぇ、そうなんです」
女将はそれだけ言うと、真紀に背を向けドアへと向かった。

そんな2人の会話を、ドアの外でコッソリと立ち聞きしている女がいた。
彼女は女将の気配を感じると、素早くその場から立ち去った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土