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マリアの休日

             


              マリアの休日





☃ PROLOGUE
2011年1月2日、朝8時。
マリアはこれから出掛ける麗子のために、玄関のドアを開けた。
「うわぁ、寒ぅ~い……」
「それじゃ行ってくるわね、マリア」
麗子は茶色のクロコのバッグを片手に、先に表に出ると曇った空を見上げた。
「あらっ嫌な天気ねぇ。何だか雪が降りそう……」
冷たい風が麗子の毛皮をザワつかせた。
「えっ? 雪……?」
マリアの声のトーンが1オクターブ上がった。
「まだ降ってないわよ。もう、なに嬉しそうな声出してるの? マリア」
麗子はマリアに振り返った。
「帰りは20時くらいになると思うわ。それじゃあね……」
麗子はマリアの頬にキスをした。
「はい、いってらっしゃいませ、麗子様」
マリアは深々と頭を垂れると、女主人である麗子を送り出した。

何処かにある街『夢の森』。
この街の住宅地にある、一際目を引く大邸宅氷見川邸。
マリアはこの広大な館で、メイドとして働いている。
この館の女主人氷見川麗子は、エステ業界の世界トップシェアを誇る『ブルー
ムーン社』の社長あり、メイドのマリアとは2人暮らしだ。
もちろん麗子とマリアは、"そういう仲" なのは言うまでもない。

☃1
例年なら麗子と2人きりのお正月を過ごすマリアだが、今年はチョット様子が
違っていた。それは、エステ業界の新年パーティーに出席するため、麗子が朝
から車で箱根に向かったのだ。
前々から判っていたスケジュールだが、さて今日1日どうしたものかと、途方
に暮れるマリアの携帯に1件のメールが届いた。
親友の響子からだった。

>ママがおせち作ったからおいでって、お誘いがあったよ。
>マリアと一緒に来たらって・・・。
>って言うか、絶対マリアは誘ってって言ってた。
>どうする? 行く?
>ちなみにママのおせちは相当美味しいよ。あたしが保証する。

ここでいうママとは、響子がバイトをしている『カフェ・アマデウス』のママ
のコトだ。
マリアはOKの返信を出し、12時にアマデウスの前で響子と待ち合わせた。

氷見川邸を出て住宅地を駅に向かって歩くと、『夢の森商店街』がある。
その商店街を抜けると幹線道路が横切り、そこにある横断歩道を渡ると駅前の
バスターミナルになっている。その背景になる建物が『夢の森駅』になる。
響子と待ち合わせたアマデウスは、この商店街の駅側の入口にあった。

「マリアー、こっち、こっち……」
アマデウスの前に立っているマリアの耳に、聞き覚えのある声が届いた。
しかし響子の姿は見えない。
駅前のバスターミナルから、幹線道路の横断歩道に視線を移したとき、1台の
車が横断歩道の脇に止まっているのに気が付いた。
「マリアー、ココだよう……」
「あっ! 響子」
助手席の窓から手を振る響子に、マリアは笑顔で手を振り返した。運転席を見
れば、ハンドルを握っているのはママだった。
マリアは車に走り寄ると、後部ドアを開けて車に乗り込んだ。
響子とママが笑顔で振り返る。
「おめでとう、マリア」
「おめでとう、マリアちゃん。今年もよろしくね」
「明けましておめでとうございます、本年もよろしくお願いします」
「まぁ、相変わらずきちんとしてるわね、マリアちゃんは……」
「ママ、それってあたしがきちんとしてないみたいじゃない」
「そうは言ってないわよ……。ただマリアちゃんは……」
「もう、ママは本当にマリアがお気に入りなんだからぁ~」
日本人離れしたママの顔が、ニッコリ笑ってマリアにウインクした。
「はいはい判りました。どうせあたしなんかより、マリアがイイのよねぇ~」
「もう、響子ちゃんったら、そんなに妬かないの。さぁ、行くわよ」
「はぁ~い……」
マリアと響子は声を揃えて言った。
「おせち作ったから、いっぱい食べてね」
「はい、いっぱいいただきます」
「マリアはこう見えて結構食べるからなぁ……」
「響子には負けるけど……」
「いやいや、食欲ではマリアの勝ちだってば」
「えぇぇ~、響子だってばぁ~」
そんな2人のやりとりを聞いていたママが、目をバックミラーに映した。
「麗子さんはお元気? 何だか年末は忙しそうだったけど」
「はい、今日は箱根の旅館で新年パーティーがあって、朝から出掛けました」
「まぁ、旅館でパーティー?」
「はい、『錦明楼』っていったかな……」
「まぁ、箱根の錦明楼っていったら、有名な老舗旅館じゃない」
「そうなんですか?」
「でも出掛けたって車で……? 今日雪になるかもしれないわよ」
「えっ? 本当ですか?」
「うん、こっちは降らないかもしれないけど、箱根はどうかしらねぇ?」
マリアは空を見上げた。刺すような冷気の中に、灰色の空が垂れ込めている。
「ホントに降るかも……?」

マリアはポツリとつぶやいた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土