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あなたの燃える手で

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そっと後から

                     
                     
      そっとから




プロローグ
「真由~! 真由っ!」
「はぁーい!」
また咲樹さんに呼ばれた。
こんどは何だろう? また怒られちゃうのかな?
「真由、このデザインなかなかイイじゃない。もうチョット唇を強調してみて、
赤くなりすぎないようにね」
「はっ、はい!」
えへっ、褒められちゃった。憧れの咲樹さんに……。


真由は咲樹から書きかけのデザインを受け取ると、
自分のデスクに戻った。PCのディスプレイには、
天使を模したデザインが映し出されている。
真由はマウスに手を置くと、ポインターをその唇に合わせた。


あたしは真由の後姿を目で追った。
真由ったら、これくらいのコトで喜んじゃって、可愛い子。
あの子がここに来てもう半年かぁ、あたしも5年前はあんなだったなぁ。
そのデザイン来週中に仕上げるのよ。頑張ってね、真由……。


咲樹はPCに向かう真由を、そっと見守った。



今週もあと2日。何だかお腹痛いけど頑張らなくちゃ。
あのデザイン、来週中に仕上げないといけないし。
それに咲樹さんが褒めてくれたんだもん。あの咲樹さんが……。

あたしはオフィスのドアを開けた。
「おはようございまーす」
オフィスには既に10人ほどが出社している。
あたしはドアから真っ直ぐにコーヒーの自販機に向かう。
「おはようございます、咲樹さん」
そして自販機で買ったコーヒーを片手に、自分のデスクに座る。
これがあたしの毎朝のコース。
「おはよう真由、朝一番でクライアントに確認して欲しいことがあるの。
あとであたしのところにきて」
「はいっ、咲樹さん」
紙コップに入ったコーヒーを、右側にどけてPCを立ち上げる。
(あぁー何だか寒気もする、風邪かなぁー?)
あたしはPCが立ち上がる間、額に手を当てた。やっぱりチョット熱い。
でもディスプレイに、昨日の作りかけの天使のデザインが映し出されると、
やっぱり頑張らなくちゃって気になる。
「この唇……、やっぱりもう少し艶があった方がイイかなぁ?」


社員が20名の女性だけで運営される広告代理店『ソフィー』。
それは「夢の森駅」の西口ターミナルから、バスで10分ほどの所にあった。
『ソフィー』は少数精鋭ながら、優秀なクリエイティブチームとして
その頭角を現しつつあり、その最大のクライアントはエステ業界最大手、
あの女社長「氷見川麗子」の率いる『ブルームーン』だ。
この度『ブルームーン』では新たに化粧品部門を立ち上げた。
その第1弾となったのが、この秋の口紅『マリアルージュ』だった。
そしてそのデザインが『ソフィー』に依頼された。
『マリアルージュ』。そのイメージは ”天使のリップ*魅惑の微笑み" だ。
真由のディスプレイには、雲間から降り注ぐ光柱の間で遊ぶ天使が描かれ、
その天使の微笑む口元が、紅く艶やかに輝いていた。


真由のあのデザイン……、あれで大丈夫かしら? 
あたしは『ブルームーン』からのFAXにもう一度目を通した。

> 【 2008 autumn debut 】
> Maria rouge *それはそっと触れたい ”天使のリップ”
> Maria rouge *それは恋を惹きつける ”魅惑の微笑み”
> Maria rougeであなたの唇に天使の微笑みを
> ★ Blue Moon  【† Maria rouge †】
>今回のデザインに関し、以上のイメージを最優先していただき……

ふぅ、やっぱり天使のバックは淡いピンクの方がイイかしら?
あたしはもう一度、PCに向かう真由の横顔を見つめた。
やだあの子、おでこに手なんか当ててる。熱でもあるのかしら。
ここのところ深残業が続いているからなぁ……。
でも、あんな子を思い通りに責めてみたいわ。どんな顔して喘ぐかしら……。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土