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あなたの燃える手で

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TRI△ NGLE

△5
一週間後、明美はホテルのロビーを横切り、エレベーターに乗ると18階のボタンを押した。音もなく閉る扉、足元から生まれる浮遊感。
そして少しばかりの期待と恐れ。
明美はエレベーターの中で、先週の桜子との約束を思い出していた。あの小指を絡めた瞬間から、明美は桜子の虜になっていた。傷ついてもいい、踏み込んでみよう。明美はそう思って18階の通路を歩いた。スプリングコートの下のミニスカートから、形のいい生脚が見え隠れしている。
(来週もこうして、来れるといいな)
明美は『MELLOW BLUE』の青い扉を開けた。カウンターにLがいて、桜子が同じ場所に座っている。それは一週間前と全く同じ光景だった。
「いらっしゃいませ。明美さん」
Lが蕩けるような笑顔で明美を迎えた。明美は少し照れたように桜子の隣に座った。
「ありがとう。来てくれたのね」
桜子の前にはシャンパングラスと灰皿がある。
「ええっ。約束……したから」
「何飲む?」
「Vodka Martini,Shaken,not stirred ですか?」
Lが微笑みながら口を挟んだ。
「えぇ、お願い」
桜子がタバコに火を点けた。流れる紫煙が明美の髪をかすめて消えていく。
「何か食べない?」
「そうね。食べましょうか」
明美はチーズと生ハムをオーダーした。二人が2杯目のウォッカマティーニに手を伸ばす頃、明美が語り出した。
「あたしね……」
それは前々から明美の中でわだかまっている、女性しか好き慣れない事・それが理由で独身な事。そして結婚の当てもない事だった。打ち明けようと思っていた訳ではない。判って欲しいだけでもない。ただ、誰かに聞いて欲しかっただけだった。
「そうなの。あたしも似たようなモンだけど、別に悩んでないよ。結婚しなくても幸せな人は大勢いるし、愛する人が同性でも、その人といることが幸せならそれでいいじゃない」
「でも……。世間は……」
「世間より自分でしょ。あたしはそう思うな。世間体が良くても不幸じゃ意味無いでしょ」
「そりゃそうだけど……」
「元気出して、明美さん」
桜子の片手が明美の太股に置かれた。置かれただけでそれ以上手が動く気配はない。
(もしかしたら、誘ってくれる? あたしを誘って、桜子……)
「あ、ありがとう。別に落ち込んでる訳じゃないの」
顔を上げた明美は、桜子を熱く見つめた。
「うん、わかってる……ねぇ、来週もまたきて。あたし待ってるから」
「ええ、きっと……」
そう言って、明美は淡く輝くグラスをそっと口元に運んだ。

(ううん、かならず来るわ、あなたに会いに。桜子)

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土