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あなたの燃える手で

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TRI△ NGLE

△2    
週末の深夜。Bar『MELLOW BLUE』には、2人の女性客がカウンターに座っていた。店内にはジャズサックスの知らない曲が流れている。
明美は桜子と呼ばれた彼女に、強烈に惹きつけられた。
「ねぇ、L。いいでしょ。もう一杯だけ……」
(なんて綺麗な子。それに可愛い声)
決して酔っている訳ではなかったが、彼女の目は少々虚ろだった。
彼女の前には、空のシャンペングラスと吸い殻が3本入った灰皿、そしてたぶん何かツマミが載っていたのだろう、白い皿が1枚あった。
「それじゃ、あと一杯だけよ。桜子」
「うん、ありがとう。Vodka Martini,Shaken,not stirred」
(ウォッカ マティーニをステアでなくシェイクで)
「好きね。007のカクテルが……」
「うふっ、好きなのはボンドガールの方だけどね」
そういって桜子はLをジッと見つめた。
(ボンドガールって、女が……? この子……)
Lを見る桜子を、明美が見つめる。
「もう、桜子ったらっ……本当はミキシンググラスでステアするだけなのよ。それにオリーブを入れるんだからっ」
Lはウォッカにドライベルモットを加えると手早くシェイクし、それをシャンペングラスに注いだ。キレのいいプロの仕事だった。
ウォッカの香りが仄かに明美の所まで漂ってくる。
「それに本来はカクテルグラスなのよ、マティーニは……」
Lは注いだウォッカマティーニにレモンピールを一枚浮かべると、桜子の前にシャンペングラスを押し出した。
「どうぞ」
そのグラスを桜子が右手で引き寄せた。袖口から彼女の腕が出た。
(綺麗な腕……)
「ありがとう。L」
桜子が4本目のタバコを引き抜いた。長くしなやかな指だった。その指先にタバコを挟み、口に咥えると火を点けた。唇の隙間から溜息のように吐き出された紫煙は、漂いながら間接照明の中に消えてゆく。
(タバコの吸い方は……、チョットぎこちないかな)
桜子を見る明美に、Lが視線を向けた。
「ごめんなさい。お待たせしちゃって。ご注文は何になさいますか?」
その声に、桜子の気をとられていた明美は我に返った。
「あっ、えぇっと。あたしも同じものを……、いいかしら」
「もちろんです。今のはウォッカマティーニといって、本来ジンベースのものをウォッカで作るんですが。よろしいですか?」
「えぇ、お願い」
「わかりました」

桜子はずっとLを見ている。その桜子の目が熱く潤んでいるのを、明美は気付かなかった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土