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あなたの燃える手で

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ダブルフェイス

7
「あのう、ちょっとすみません」
千鶴は南のテーブルに近づくと、その横顔に声を掛けた。

声を掛けられた方は、目を丸くして返事をした。
「あなた昨日、天宮玲の選挙演説聞いてくれてたわよね」
「えっ? あっ、はい……」
南は怪訝そうな顔で千鶴を見た。玲の顔は知っているが、秘書の顔は知らなか
ったようだ。
「あっ、ごめんなさい。あたしこういう者です」
千鶴はまずは名刺を渡した。
「あっ、天宮さんの、秘書さんですかぁ?」
「はい。きのう先生の演説を聴くあなたが、選挙カーから見えたから……」
もちろん、ずっと見ていたなんて言うはずもない。
「それで昨日の今日でしょう? それでお声掛けさせてもらいまいした」
それを聞いて南は安心した。
「もしかして今日も、先生の演説を?」
「はい。でもチョット早く着いちゃって。それで時間潰しにここに」
「あらっ、あたし達もチョット早く着いちゃって。ここで時間潰してるの」
千鶴は急に打ち解けた口調になった。
「先生ならあそこにいるわよ」
「えっ?」
南がほぼ90度首を曲げると、そこに玲の姿があった。外ばかり気にして、気
が付かなかったようだ。
「ねぇあなた、あっちにいかない? 座れるから……。いらっしゃいな」
「いいんですかぁ?」
「いいわよぉ。先生のファンなら大歓迎よ」
「それじゃ、失礼します」
南は立ち上がると、千鶴と奥の席へと歩いた。

それから三人は、あっという間にが打ち解けた。
「へぇ~、そうだったんですかぁ。当たり前に屋上使ってるけど、知りません
でしたぁ」
「それに放課後の帰宅時間もですよね」
「えぇ? それもですかぁ? 凄ぉい」
南は自分の夢は国家議員になること。玲の考えに賛同すること。そして玲が憧
れの人であることなどを伝えた。
「それじゃ南ちゃんも、男なんて嫌い?」
「はい。嫌いです。自分勝手で、汚いし、だらしないし……」
「あぁー、残念だわぁ。あなたに選挙権が無いなんて。確実な一票なのに」
「本当ですねぇ。取り敢えずの一票とかじゃなくて、ちゃんと賛同を得た上で
の一票ですから……。残念です」
「でもあたし、ずぅ~っと先生のこと、応援しますから」
「もう、嬉しいこと言ってくれるわねぇ。この子はぁ~」
「ホントに可愛いわ。先生のタイプですよね」
「えっ? タイプ……?」
「そうよ。だって先生女が好きなんだもん、そうですよね、センセ」
「もう、そんなにハッキリ言わないの。南ちゃんが驚いちゃうでしょう」
「大丈夫です。あたしもそうですから……」
「そうなのぉ?」
驚いたのは千鶴の方だった。
「そうだと思ったわぁ。ほらっごらんなさい。今時の子はこれ位じゃ驚かない
のよ、ねぇ南ちゃん」
「えっ、えぇ……」
玲はテーブルを挟んで南を見つめた。
「もう、見れば見るほど可愛いわ。抱きしめたいくらい」
「いいですよ。あたし、先生なら……。抱かれても」
"抱きしめたい" と "抱かれたい" とじゃ……。そう言おうとした千鶴は、その
言葉を飲みこんだ。それは南の顔が、ことのほか真剣だったからだ。
それは玲にも伝わっていた。
「いいの? そんなコト言って。あたしに食べられちゃうかもよ」
「先生、そろそろ……」
「あたし本当に、先生になら……、いいです」
南はテーブル越しに玲を熱く見た。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土