狩人はバニラの香り
11
『アマデウスの二人 4 』
響子は厨房の奥で、明日香の喘ぎ声を聞いていた。
陰になって姿が見えないのは残念だったが、何も今日でなくてもいい。
あの子は必ずまた『アマデウス』に来る。響子はそう確信していた。
午後3時。響子は本当に『アマデウス』に来ていた。
今朝、駅で聞いた会話通りに、彼女が来るかもしれないからだ。
もし明日香が来たら、ドアに本日休業の札を出し、鍵を掛ける手筈だった。
そしてその時は訪れた。響子がレジの整理をしているとき、何気なく外に向けたその目に、夕暮れの横断歩道で信号に捕まっている明日香を見つけ、すぐにママに知らせたのだ。
明日香が店の奥まで歩いている間に、本日休業の札を出したのも、注文を聞いてママが厨房に戻ってきた時、ガムシロの作戦を考えたのも響子だった。
「後はママ次第よ。うまくやってね」
「ふふっ、あの子あたしのこと、まんざらでもないみたいだし。それより、響子ちゃんは顔出さなくていいの? あの子あなたに会いに来たんじゃなの?」
「いいんです。世の中そんなに甘くないんですから」
「そう? あなたに会えなかったらもう来ないかもしれないわよ」
「そんなこと無いですよ。また明日の朝会いますから。逆に会えるまで来るんじゃないかな」
「それならいいけど」
ママは紅茶とケーキを明日香のテーブルに運んでいった。
響子はワザと顔を合わさずに、明日の朝何食わぬ顔で彼女と会うつもりだ。
「彼女、どんな顔をするかしら? チョット楽しみだわ。あたしに会いに来たのに、ママとあんな事になって」
もう少しあの子との距離を縮めて、気軽にここに誘ってみよう。響子の頭の中で、新たな計画が頭をもたげ始めていた。
響子は計画を考えながら、明日香の声に耳を傾けた。
「ここをこうやって、カリカリされるのが堪らないみたいねぇ?」
「あぁぁ~だめぇ、それはだめぇ~やめてぇ、もう、もうだめぇ」
観葉植物の葉の隙間からは、立ち話をしている主婦の姿が見えた。
時々思い出したように、店の中に視線を向けている。
「んん~やめないわよぉ。まだまだ、ほぅ~らっ堪らないでしょう」
「ああっ、ああっ、あぁぁ~だめぇ~。逝くぅ~あぁ逝くぅ、逝くっ逝くっ」
「そろそろ、逝かせてあげましょうか? 明日香ちゃん」
「ああぁぁ~逝かせてぇ、逝かせてくださいぃ~。お願いぃ。逝きたいのぉ」
「でもその前に、また来てくれる? それが約束できるなら逝かせてあげる」
「きっ、来ますぅ。絶対、絶対来ますぅ。だから、だから逝かせてぇ~」
「そう、約束よ。今度はもっと気持ちよくしてあげる。ほらっ、逝きなさい」
明日香の腰が跳ね上がるように浮き上がり、やがて引力を思い出したように椅子に崩れ落ちた。
響子は、厨房で明日香の断末魔の声に聞き入っていた。
『アマデウスの二人 4 』
響子は厨房の奥で、明日香の喘ぎ声を聞いていた。
陰になって姿が見えないのは残念だったが、何も今日でなくてもいい。
あの子は必ずまた『アマデウス』に来る。響子はそう確信していた。
午後3時。響子は本当に『アマデウス』に来ていた。
今朝、駅で聞いた会話通りに、彼女が来るかもしれないからだ。
もし明日香が来たら、ドアに本日休業の札を出し、鍵を掛ける手筈だった。
そしてその時は訪れた。響子がレジの整理をしているとき、何気なく外に向けたその目に、夕暮れの横断歩道で信号に捕まっている明日香を見つけ、すぐにママに知らせたのだ。
明日香が店の奥まで歩いている間に、本日休業の札を出したのも、注文を聞いてママが厨房に戻ってきた時、ガムシロの作戦を考えたのも響子だった。
「後はママ次第よ。うまくやってね」
「ふふっ、あの子あたしのこと、まんざらでもないみたいだし。それより、響子ちゃんは顔出さなくていいの? あの子あなたに会いに来たんじゃなの?」
「いいんです。世の中そんなに甘くないんですから」
「そう? あなたに会えなかったらもう来ないかもしれないわよ」
「そんなこと無いですよ。また明日の朝会いますから。逆に会えるまで来るんじゃないかな」
「それならいいけど」
ママは紅茶とケーキを明日香のテーブルに運んでいった。
響子はワザと顔を合わさずに、明日の朝何食わぬ顔で彼女と会うつもりだ。
「彼女、どんな顔をするかしら? チョット楽しみだわ。あたしに会いに来たのに、ママとあんな事になって」
もう少しあの子との距離を縮めて、気軽にここに誘ってみよう。響子の頭の中で、新たな計画が頭をもたげ始めていた。
響子は計画を考えながら、明日香の声に耳を傾けた。
「ここをこうやって、カリカリされるのが堪らないみたいねぇ?」
「あぁぁ~だめぇ、それはだめぇ~やめてぇ、もう、もうだめぇ」
観葉植物の葉の隙間からは、立ち話をしている主婦の姿が見えた。
時々思い出したように、店の中に視線を向けている。
「んん~やめないわよぉ。まだまだ、ほぅ~らっ堪らないでしょう」
「ああっ、ああっ、あぁぁ~だめぇ~。逝くぅ~あぁ逝くぅ、逝くっ逝くっ」
「そろそろ、逝かせてあげましょうか? 明日香ちゃん」
「ああぁぁ~逝かせてぇ、逝かせてくださいぃ~。お願いぃ。逝きたいのぉ」
「でもその前に、また来てくれる? それが約束できるなら逝かせてあげる」
「きっ、来ますぅ。絶対、絶対来ますぅ。だから、だから逝かせてぇ~」
「そう、約束よ。今度はもっと気持ちよくしてあげる。ほらっ、逝きなさい」
明日香の腰が跳ね上がるように浮き上がり、やがて引力を思い出したように椅子に崩れ落ちた。
響子は、厨房で明日香の断末魔の声に聞き入っていた。