狩人はバニラの香り
8
明日香が「夢の森」駅に降り立った時、見上げる空は茜色に染まっていた。
今朝、ホームで聞いた彼女の携帯での会話の通りに、西口の出口に向かった。
西口には大きな幹線道路に面したバスターミナルがあり、それを迂回しながら幹線道路の横断歩道まで歩く。それを渡ったところに商店街はあった。
横断歩道の信号に捕まった明日香は、商店街の方に目を向けた。すると商店街のすぐ入口に、ガラス張りの喫茶店が見えた。
何気なくその店を見ながら歩く明日香の目に、『アマデウス』と書かれた看板が飛び込んできた。
「あれっ? ここだっ。カフェかぁ。ケーキ屋さんかと思ってた」
歩きながらガラス越しに彼女を捜したが、彼女の姿は見あたらない。
明日香はドアを開け、中に入った。
「いらしゃいませ」
この人がママ? こんな綺麗な人がママさんなんだ。
明日香は店の奥にある観葉植物の陰になる4人掛けのテーブルを選んだ。
向かいの椅子にバッグを置くと壁を背にして座った。
彼女の姿は見えなかったが、あからさまに顔が見えるのも恥ずかしかった。
半端な時間なのか店内に客はいない。そこへママが水を持って現れた。
明日香の胸はときめき、その日本人離れした顔に見とれていた。
「いらしゃいませ」
黒のノースリーブから、柔らかなラインを描く綺麗な腕がのぞいている。妖艶な唇から発する声は、艶やかな音色となって明日香の耳に届いた。
「ええっと、アップルティーに……ええっと」
明日香は気が付かない。ママの視線がミニから覗く脚に注がれていることに。
「何かオススメのケーキはありますか?」
「オススメ? そうねぇ」
そう言ってママは、明日香の真横に来ると上体を前に折り、テーブルのメニューに手を伸ばした。その時、ママの大きな胸が明日香の肩に触れた。
ノーブラ? だって今の感触……。
「チーズケーキはお好きかしら?」
「はい。じゃ、それを下さい」
ママはメニューをメニュー立てに戻そうと再び上体を折った。またノーブラの
胸が明日香の肩に触れた。その時ママがメニューを倒し、更に腕を伸ばした。大きく柔らかな胸は、明日香の肩で大きく潰れ形を変えた。
「あらっ、ごめんなさい」
「いっ、いいえっ。あのう、ここに……」
「はい? ここに? 」
「若いバイトの人が……」
「ああぁ、響子ちゃんの事? かしら? 響子ちゃんのお友達?」
「いっいえっ、そんな。違います。いいんです。ごめんなさい」
響子ちゃん。そっか、響子って言うんだ。彼女。
明日香は胸の中で喜びの声を上げた。もう彼女なんて言いわない。
「アップルティーと、チーズケーキですね」
粘り着くような熱い視線が、明日香の瞳に絡まった。
ママはそれだけ繰り返すと、厨房の奥へと消えていった。
明日香が「夢の森」駅に降り立った時、見上げる空は茜色に染まっていた。
今朝、ホームで聞いた彼女の携帯での会話の通りに、西口の出口に向かった。
西口には大きな幹線道路に面したバスターミナルがあり、それを迂回しながら幹線道路の横断歩道まで歩く。それを渡ったところに商店街はあった。
横断歩道の信号に捕まった明日香は、商店街の方に目を向けた。すると商店街のすぐ入口に、ガラス張りの喫茶店が見えた。
何気なくその店を見ながら歩く明日香の目に、『アマデウス』と書かれた看板が飛び込んできた。
「あれっ? ここだっ。カフェかぁ。ケーキ屋さんかと思ってた」
歩きながらガラス越しに彼女を捜したが、彼女の姿は見あたらない。
明日香はドアを開け、中に入った。
「いらしゃいませ」
この人がママ? こんな綺麗な人がママさんなんだ。
明日香は店の奥にある観葉植物の陰になる4人掛けのテーブルを選んだ。
向かいの椅子にバッグを置くと壁を背にして座った。
彼女の姿は見えなかったが、あからさまに顔が見えるのも恥ずかしかった。
半端な時間なのか店内に客はいない。そこへママが水を持って現れた。
明日香の胸はときめき、その日本人離れした顔に見とれていた。
「いらしゃいませ」
黒のノースリーブから、柔らかなラインを描く綺麗な腕がのぞいている。妖艶な唇から発する声は、艶やかな音色となって明日香の耳に届いた。
「ええっと、アップルティーに……ええっと」
明日香は気が付かない。ママの視線がミニから覗く脚に注がれていることに。
「何かオススメのケーキはありますか?」
「オススメ? そうねぇ」
そう言ってママは、明日香の真横に来ると上体を前に折り、テーブルのメニューに手を伸ばした。その時、ママの大きな胸が明日香の肩に触れた。
ノーブラ? だって今の感触……。
「チーズケーキはお好きかしら?」
「はい。じゃ、それを下さい」
ママはメニューをメニュー立てに戻そうと再び上体を折った。またノーブラの
胸が明日香の肩に触れた。その時ママがメニューを倒し、更に腕を伸ばした。大きく柔らかな胸は、明日香の肩で大きく潰れ形を変えた。
「あらっ、ごめんなさい」
「いっ、いいえっ。あのう、ここに……」
「はい? ここに? 」
「若いバイトの人が……」
「ああぁ、響子ちゃんの事? かしら? 響子ちゃんのお友達?」
「いっいえっ、そんな。違います。いいんです。ごめんなさい」
響子ちゃん。そっか、響子って言うんだ。彼女。
明日香は胸の中で喜びの声を上げた。もう彼女なんて言いわない。
「アップルティーと、チーズケーキですね」
粘り着くような熱い視線が、明日香の瞳に絡まった。
ママはそれだけ繰り返すと、厨房の奥へと消えていった。