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あなたの燃える手で

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水蜜楼別館離れ


二人の出会った小さな橋から、水蜜楼の女将と名乗った彼女に付いて歩くこと
10分。奈津は水蜜楼へと案内された。
「こちらが水蜜楼でございます」
「あっ、ここが……」

それは空から見れば、森の中にポッカリと空いた穴のように見えるかもしれな
い。いや、穴というよりは、森を頭と例えれば、それは "十円ハゲ" といえば
わかりやすいだろうか。
そんなポッカリと空いたスペースをうまく利用し、水蜜楼は建てられていた。
それは正面から見れば平屋だが、奥には2階建ての部分も見える。平屋部分の
中央に立派な広い玄関を持ち、その両翼はゆうに25メートルはありそうだ。
まるで何処かのアニメでモデルとして使われそうな、重厚でありながら圧力を
感じさせない、そんな佇まいだった。
まさか何もなさそうなあの橋から続く道に、こんな大きな旅館があるとは。

「どうぞ、こちらへ……」
大きな玄関は引き戸で、ガラスには水蜜楼の文字が筆字で書かれている。
「お上がりください……」
中へ通されると、平屋部分はエントランスだけなのがわかる。そこは中庭のよ
うになっており、数十種の観葉植物で小さな森が構成されていた。

そんな中庭を眺めているうちに、女将は手続きを済ませてくれたようで、奈津
の元へと戻ってきた。
「それではお部屋へご案内いたします」
「あっ、はい……」
奈津は女将の後ろをついて歩いていった。そんな奈津に、突然お上が振り替え
て言った。
「あのう、花村様?」
「はい」
「今でしたら、別館の方もお使いいただけますが」
「別館ですか」
「えぇ、それも、もしよろしければ、離れの方を……」
「離れ……?」
「はい。今おりますのが本館でございまして、本館の隣に別館が、そして別館
とは少し離れたところに離れがございます」
「そうなんですか」
「はい。別館は2階建てで8室ございますが、離れは平屋で一部屋だけでござ
います」
「離れも温泉はぁ……、露天……、」
「はい。もちろんでございます。露天も内湯も源泉掛け流しでございます」
「よかった。温泉、楽しみにしているので……」
「そうでございますか。ならばそちらの方はご心配には及びません。離れは完
全に独立しておりまして、本館、別館からは見えない作りになっております」
「そうなんですか。いいですね、それ」
「はい。お部屋からの眺めもなかなかのものでございますよ」
「でも、お高くなるんじゃ……」
「花村様は、特別に本館の使用料金で結構でございます」
「えっ、どうしてですか?」
「実は離れは完成したばかりでして、それで花村様にはモニターになっていた
だけるならば、という条件付きでございますが」
「そんなことなら喜んで……」
「ありがとうございます」
女将は廊下の途中で立ち止まると、深々と頭を下げた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土