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あなたの燃える手で

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秘湯の夜


「渓遊館」の看板はすぐに見つかった。
「うわぁー古っ、これ築何年だろう?」
木造2階建てで旅館と言うよりは民宿? と言った方がしっくり来るかも。
入口の横には場違いなソテツと、橙色の鬼百合が咲いている。
それを横目に、入口の引き戸を開け中に入った。まるで民家のような玄関。
「やっぱり民宿? すいませーん」
「はぁーいっ」
奥から元気のいい女将が、長い廊下を早歩きでやって来た。
「予約した、水原璃緒ですけど」
「ああ、水原さんね。お待ちしておりました。どうぞ、お上がり下さい」
「お世話になります」
玄関から1歩上がると、162センチの私の身長でも低いと感じる天井だった。
意外と中は広く、ひんやりと涼しかった。
女将の後について玄関横の階段を上り、「白百合」と書かれた部屋に通された。
部屋にはローテーブルと座布団。それと姿見があって、その前には100均で売っているようなヘアブラシが置いてある。これは使わないでしょう。
窓を開けると空は茜色から藍色にその色を変えようとしていた。下を見ると窓のすぐ下を川が流れ、心地よいせせらぎが私の鼓膜を擽った。川の向こうは土手から道を挟んで民家が続き、その向こうはもう真っ暗な山肌が迫っている。
「水原さんは東京からですか? 暑かったでしょう? 今お茶淹れますからね」
「ええ、あっ、すいません」
私はバッグを床に下ろして、カメラをテーブルに置いた。
「このお名前、 ”りお” さんで? まぁ、立派なカメラねぇ」
「はい。ああ、ありがとうございます。もう古いんですけど」
「いいわねぇ、お若くて」
「いえっ、もう今年で25歳ですから」
「25歳。そうですか。どうぞごゆっくり。お風呂はいつでも入れますからね」
「あっ、はい。どうも」
女将はお茶を注ぎ終わると部屋を後にした。遠くにセミの声が聞こえた。

私はポロシャツとジーンズを脱ぐとクローゼットのハンガーに掛けた。
部屋の冷気が濡れた素肌に張り付いてすごく気持ちがいいの。ついでにショーツとブラも脱いで全裸になっちゃった。
襖の閉まったままの隣の部屋を開けてみた。そこには糊の効いた真っ白なシーツの布団が敷かれている。あぁ、この上に飛び込みたい。大の字になりたいなぁ。
しかし私はどうにかその衝動を抑えむことに成功。そんなことより夕食前に温泉に入ることにしよう。そうだ、まずは温泉だ。とにかく1秒でも早くこの汗を流してサッパリしたい。地味な色合いの浴衣を羽織って、1階の奥にあるという大浴場に向かった。
白い湯気の立ち込めた大浴場は室内風呂と、そこから行ける露天風呂があった。
思った通り大浴場と言うにはあまりに小さい。そんな大浴場で軽く体を流すと、私は ”露天風呂” と書かれた扉を開けて外に出た。
岩風呂を模した露天風呂。運良く誰も入ってない。これって貸し切りじゃん。
私は湯気の立ち昇る、少し茶色く色づいたお湯に体を浸した。
岩の間から流れ落ちる湯の音が耳に心地いい。
「はぁー極楽極楽。うふふっ。ここの効能は? 何でもいっか」
見上げる夜空に無数の星が瞬いている。ちょっと怖いくらいの星の数だった。
見上げた首を戻すと、湯気の向こうに誰かいるのに気が付いた。
「あれ? いつの間に? まっ、いっか」
貸し切りじゃなくなった事に少々不満はあるけど、まっ、しょうがないね。
でもあの人どこかで、アレ? えっ? まさか? そうだ、あの人だ。あの川の大きな岩に腰掛けていた。あの不思議な人。不思議な人と言うのは私が勝手に付けたあだ名みたいなものだけど。でも何で? どうしてここにいる訳?
「こんばんは」
彼女が声を掛けてきた。なんて綺麗な声。鼓膜と言うより直接心に響いてくるような声だった。
「こんばんは」
あたしも挨拶を返した。彼女はにっこりと微笑むと湯から立ち上がった。
白い、どこまでも白い肌。そして女性らしいラインを持ったその体。濡れた黒髪から流れた落ちた湯は、豊かな胸を通り、腰のくびれで加速して、股間の小さな茂みから滴り落ちた。
彼女は私に背を向けると湯から上がった。その後ろ姿が私の目を釘付けにする。
だって、きめ細かな白い背中はまるで陶器のようで、それでいて小さなお尻はほんのりと、まさに桃色だった。ちょっと触ってみたいなんて思っちゃう。

部屋に戻って念願の大の字になった。冷たいシーツのパリッとした感触。
「くぅ~気持ちいいぃ~。これだよこれ。そうだ、ビールビール」
私は起きあがると小さな冷蔵庫から瓶ビールを出した。栓を抜きコップに注ぎ、そして唇を寄せて一気に飲み干した。
「プハーッ。最高、もう最高。ああぁ、生きててよかった」

その後夕食を済ませ、再び布団に横になってテレビを見ていたとき、この部屋のドアのノックする音が聞こえた。
「あのぅ、すいません」
「はい」
あれ? あの声は? もしかして? でも何だろう? こんな時間に。
私はドアを開けた。そこにはあの露天風呂で見た不思議な人が、いや一目惚れしたアノ人が、両手に缶ビールを持って浴衣姿で立っていた。
彼女は頭を下げた。長い黒髪がサラサラと流れる。そして頭を上げると、手にした缶ビールをかざして天使のような笑顔で言った。
「よければ、一緒に飲みませんか?」

Comments 2

マロ  

何か、なんとなくですが、おとぎ話みたいな雰囲気がありますね。

動き出しそうな感じになって来ましたね。
続き楽しみにしてます。

2007/08/18 (Sat) 22:02 | EDIT | REPLY |   
蛍月  
おはようございます

>おとぎ話みたいな雰囲気・・・。
ある意味スルドイ!

でもこれ以上は内緒です (^_-)

ストーリーもイントロはここまで。
ここから、璃緒と由里が急接近です。

2007/08/19 (Sun) 07:05 | EDIT | REPLY |   

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土