深夜バス 2
6
「ねぇ結衣。乾杯する?」
みどりさんはバーボンの大きな瓶をあたしに見せると、一杯やるかって顔をし
て笑った。
「あっ、それ……」
「そう。LOVE ROSES」
みどりさんがグラスに氷を入れる。カロンコロンと涼しげで硬質な音を立て
て、氷がクリスタルの中で転がった。
「ロックでいい?」
「はい」
そして "愛の薔薇" は、グラスを半分だけ琥珀色に変えた。
みどりさんはあたしにグラスを渡すと、顔の高さにそれを掲げた。
「結衣、あの歌覚えてる?」
「えっ……?」
「 "それは恋の暗号 3つの薔薇があなたをここへ誘うの" の次」
「えぇっと、何でしたっけ? ごめんなさい。思い出せない」
「 "もしもそれに気づいたら あの夜に乾杯しましょう" 」
「あっ、そうだ……。でもそれってもしかしたら……」
「そう、結衣と乾杯するための。きっとこうなると信じて書いた1行なの」
「やっぱり……」
「もしかしてそう思ってた?」
「はい、この1行はなんとなくそんな気が」
「そうだったの。じゃ、歌の通り乾杯しましょう。あの夜に……」
「乾杯……」
グラスとグラスがキスをするように触れ合った。そしてあたしとみどりさんが
キスをするのに、さして時間は掛からなかった。
みどりさんはバーボンを口に含むとあたしに上を向かせ、自分は上から唇を重
ねた。あたしの口にバーボンを流し込むとみどりさんの唇が離れた。
「飲んで……」
あたしはみどりさんを上目遣いで見つめたまま、バーボンを飲み込んだ。それ
はどこまでも熱く、毛細血管にまで染み込んでいくようだった。
「美味しい? 結衣」
「はい。美味しいです」
「うふっ、可愛い……」
そしてまた、舌が "ヌメッ" と入ってきた。舌はあたしの舌との再会を喜ぶよ
うに絡みつくと、誘うように引き抜かれた。だから今度はあたしが舌を差し込
んだ。互いに背中に両手を回し、抱き合い密着しながらあたし達は服を脱いで
いった。
まるで早くそうなりたかったかのように、二人はあっという間にショーツとブ
ラだけになった。
「ベッドに行きましょう」
「はい」
みどりさんはあたしの手を握ると、そのまま寝室へと導いた。
寝室には窓はなく、ダブルベッドが部屋の大半を占めていた。ちょっと狭さを
感じるものの、あたし達には必要以上の広さはいらない。それにこのちょっと
狭い密室感が、あたしを淫らな気持にもさせた。
照明も柔らかで優しく、二人の肌をほんのりと染め上げている
みどりさんが寝室のドアを閉めると、その密室感はより一層高まった。
そしてあたしとみどりさんは、ベッドの端に腰掛けたまま長いキスをした。
「ねぇ結衣。乾杯する?」
みどりさんはバーボンの大きな瓶をあたしに見せると、一杯やるかって顔をし
て笑った。
「あっ、それ……」
「そう。LOVE ROSES」
みどりさんがグラスに氷を入れる。カロンコロンと涼しげで硬質な音を立て
て、氷がクリスタルの中で転がった。
「ロックでいい?」
「はい」
そして "愛の薔薇" は、グラスを半分だけ琥珀色に変えた。
みどりさんはあたしにグラスを渡すと、顔の高さにそれを掲げた。
「結衣、あの歌覚えてる?」
「えっ……?」
「 "それは恋の暗号 3つの薔薇があなたをここへ誘うの" の次」
「えぇっと、何でしたっけ? ごめんなさい。思い出せない」
「 "もしもそれに気づいたら あの夜に乾杯しましょう" 」
「あっ、そうだ……。でもそれってもしかしたら……」
「そう、結衣と乾杯するための。きっとこうなると信じて書いた1行なの」
「やっぱり……」
「もしかしてそう思ってた?」
「はい、この1行はなんとなくそんな気が」
「そうだったの。じゃ、歌の通り乾杯しましょう。あの夜に……」
「乾杯……」
グラスとグラスがキスをするように触れ合った。そしてあたしとみどりさんが
キスをするのに、さして時間は掛からなかった。
みどりさんはバーボンを口に含むとあたしに上を向かせ、自分は上から唇を重
ねた。あたしの口にバーボンを流し込むとみどりさんの唇が離れた。
「飲んで……」
あたしはみどりさんを上目遣いで見つめたまま、バーボンを飲み込んだ。それ
はどこまでも熱く、毛細血管にまで染み込んでいくようだった。
「美味しい? 結衣」
「はい。美味しいです」
「うふっ、可愛い……」
そしてまた、舌が "ヌメッ" と入ってきた。舌はあたしの舌との再会を喜ぶよ
うに絡みつくと、誘うように引き抜かれた。だから今度はあたしが舌を差し込
んだ。互いに背中に両手を回し、抱き合い密着しながらあたし達は服を脱いで
いった。
まるで早くそうなりたかったかのように、二人はあっという間にショーツとブ
ラだけになった。
「ベッドに行きましょう」
「はい」
みどりさんはあたしの手を握ると、そのまま寝室へと導いた。
寝室には窓はなく、ダブルベッドが部屋の大半を占めていた。ちょっと狭さを
感じるものの、あたし達には必要以上の広さはいらない。それにこのちょっと
狭い密室感が、あたしを淫らな気持にもさせた。
照明も柔らかで優しく、二人の肌をほんのりと染め上げている
みどりさんが寝室のドアを閉めると、その密室感はより一層高まった。
そしてあたしとみどりさんは、ベッドの端に腰掛けたまま長いキスをした。