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あなたの燃える手で

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深夜バス 2


「ねぇ結衣。乾杯する?」
みどりさんはバーボンの大きな瓶をあたしに見せると、一杯やるかって顔をし
て笑った。
「あっ、それ……」
「そう。LOVE ROSES」
みどりさんがグラスに氷を入れる。カロンコロンと涼しげで硬質な音を立て
て、氷がクリスタルの中で転がった。
「ロックでいい?」
「はい」
そして "愛の薔薇" は、グラスを半分だけ琥珀色に変えた。
みどりさんはあたしにグラスを渡すと、顔の高さにそれを掲げた。
「結衣、あの歌覚えてる?」
「えっ……?」
「 "それは恋の暗号 3つの薔薇があなたをここへ誘うの" の次」
「えぇっと、何でしたっけ? ごめんなさい。思い出せない」
「 "もしもそれに気づいたら あの夜に乾杯しましょう" 」
「あっ、そうだ……。でもそれってもしかしたら……」
「そう、結衣と乾杯するための。きっとこうなると信じて書いた1行なの」
「やっぱり……」
「もしかしてそう思ってた?」
「はい、この1行はなんとなくそんな気が」
「そうだったの。じゃ、歌の通り乾杯しましょう。あの夜に……」
「乾杯……」
グラスとグラスがキスをするように触れ合った。そしてあたしとみどりさんが
キスをするのに、さして時間は掛からなかった。


みどりさんはバーボンを口に含むとあたしに上を向かせ、自分は上から唇を重
ねた。あたしの口にバーボンを流し込むとみどりさんの唇が離れた。
「飲んで……」
あたしはみどりさんを上目遣いで見つめたまま、バーボンを飲み込んだ。それ
はどこまでも熱く、毛細血管にまで染み込んでいくようだった。
「美味しい? 結衣」
「はい。美味しいです」
「うふっ、可愛い……」
そしてまた、舌が "ヌメッ" と入ってきた。舌はあたしの舌との再会を喜ぶよ
うに絡みつくと、誘うように引き抜かれた。だから今度はあたしが舌を差し込
んだ。互いに背中に両手を回し、抱き合い密着しながらあたし達は服を脱いで
いった。

まるで早くそうなりたかったかのように、二人はあっという間にショーツとブ
ラだけになった。
「ベッドに行きましょう」
「はい」
みどりさんはあたしの手を握ると、そのまま寝室へと導いた。
寝室には窓はなく、ダブルベッドが部屋の大半を占めていた。ちょっと狭さを
感じるものの、あたし達には必要以上の広さはいらない。それにこのちょっと
狭い密室感が、あたしを淫らな気持にもさせた。
照明も柔らかで優しく、二人の肌をほんのりと染め上げている
みどりさんが寝室のドアを閉めると、その密室感はより一層高まった。
そしてあたしとみどりさんは、ベッドの端に腰掛けたまま長いキスをした。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土