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あなたの燃える手で

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深夜バス 2


みどりさんはあたしに抱きついたまま、頬をあたしの肩に押し付けた。
「あぁー、とうとう来てくれたのねぇ、結衣。ありがとう~」
「はい。何とか来れました……」
「ねっ、とにかく入って、あんまり広い部屋じゃないんだけど……」
みどりさんはあたしの手を引いて、部屋に引き入れると、ドアに鍵をかけた。
「もぉー結衣ぃ、ホントに嬉しいわぁー。ここに来たっていうことは……、コンサートにも来てくれたのね」
「もちろん、初日に」
「それじゃ、あの歌の意味に気がついてくれたのね」
「はい」
「ありがとう。でもよく分かったわね。あの歌の意味」
「最初は半信半疑でした。でもあまりにもあの深夜バスとリンクするし、やっ
ぱりなんかありそうだと思って」
「そう、嬉しいわ。あたしの暗号を解いてくれて」
「あのバス停のシール、みどりさんが……?」
「そうよ。だってもし、もしも結衣が分かってくれたら、最初で最後の手段だ
ったんだけどね。こんなことになるなら、深夜バスで何か連絡先を渡しておけ
ばよかったって、すごく後悔したわ」
「あたしもです。あの日みどりさんと別れてから、どんどん会いたくなって、
どうして何も連絡手段のないまま別れちゃったんだろうって……」
「まぁ、あなたもそうだったの」
「はい。別れ際、あのタクシーの中でみどりさんの口が、"またね" って動いた
ように見えて……」
「あぁ、あれね……。そう、さようならって言えなかったの、何だか。まさか
あんな暗号めいた歌を作ることになるなんて、思いもしなかったけど」
「うふっ、そうですよね。あたしもまさかコンサートであんな暗号めいた曲を
聴くとは思ってもみませんでした」
二人はすべてがうまくいったことに安堵し、できるとは思っていなかったこの
再開に、心から喜び笑いあった。

「みどりさん、金沢にはいつまで?」
「明後日までよ。明後日には次の札幌に移動するの」
「そうだったんですか。じゃ、ギリギリ間に合ったって感じだったんですね」
「いいじゃない、ギリギリでも。もうこれからは連絡取れるんだから、寂しく
ないわ」
「そうですね、そうですよね……」
「そういう結衣は? 今日はゆっくりできるの?」
「はい、あたしは今のところずっと暇ですから」
「うふふっ、そっか、そうだったわね」
「あたしも金沢でのコンサートは全部終了して、今日と明日は予備日なの」
「それじゃ……」
「ゆっくりできるわ。ねぇ、結衣。泊まっていって」
「いいんですか?」
「いいわよぉ~。もう水臭いこと言わないで。それに……」
「それに?」
「もう分かってるクセにぃ」
「何ですか?」
「もう、結衣ったらぁ、あたしの口から言わせる気ぃ?」
あたしはみどりさんが何を言いたいのか百も承知だった。でも、やっぱりみど
りさんの口から聞きたかったのだ。だからあたしは、みどりさんの目を真正面
からまっすぐに見た。そんなあたしをみどりさんも見つめ返す。
そしてみどりさんは、あたしの言って欲しい言葉を言ってくれた。
「あなたと愛し合いたいの」

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土