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あなたの燃える手で

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深夜バス 2


あたしの頭から、薔薇の暗号が離れない。
食事中も、掃除をしていても、そしてベッドでゴロゴロしていても。
何だろう、あの3つの薔薇のもつ意味は……。なぜ "駅" は剥がせず、2つの
"13" は剥がせたのか。

あたしは気分転換にお風呂に入った。
シャワーのコックをひねり、熱い飛沫をを頭から浴びた時、あたしの頭に天啓
が舞い降りた。
「ちょっと待って、駅は剥がせなくても駅と分かったから駅と読んだ。でも時
刻は、13時はともかく、13分は薔薇を剥がさなかったら何分かわからなかっ
た。ということは……。そうか、剥がせるものは剥がして読み、剥がせないも
のは、そのまま読めということではなかろうか」
そこであたしは一旦シャワーを止めた。
「そうすると……、金沢薔薇 13 13……? なにコレ。薔薇、薔薇、薔薇、薔薇はローズ、金沢ローズ……って、何かあったっけ? うぅ~んやっぱり分
かんない」

あたしはむしゃくしゃして、また頭から熱いシャワーを浴びた。
するとなんと、2度目の天啓が舞い降りたのだ。
「金沢ローズって、もしかして金沢ローズホテルのこと? それで2つの13っ
て、13階の13号室って意味だとしたら……」
ピアニストとして滞在しているホテルとその部屋番号。一応意味は通る。
「あれっ、もしかしたら……。あたし、暗号解いちゃったかも……」
あとは本当に、このホテルに滞在しているかどうか、その一点だけだ。


翌日あたしは金沢ローズホテルに向かった。正面ロービーを通り、エレベータ
ーに乗ると、13階のボタンを押した。エレベーターは心の準備をする間も与
えず、あっという間にあたしを13階へと連れて行った。
いきなり部屋へ行くなんてホントは……。でも事前に連絡する術を持たないあ
たしには、やっぱりこれしかないのだ。

あたしは13号室の前に立った。
本当にこのドアの向こうにみどりさんがいるのだろうか。確かに暗号は解い
た……。でも自信があるかといえば、そんなこともなく。もしかしたら全然違
う解答があったのかもしれない。そんな不安はこうしてここまできて、ドアの
前に立った今でも、拭い去ることはできなかった。
もしも間違っていたら謝って帰る、それだけのことだ。
あたしは右手を握ると、"コンコン" と2度ノックした。
「はぁ~い」
ドアの向こうから僅かに聞こえてきたのは、女性の声だった。ドア越しだから少しくぐもって聞こえる。でも、だけど、この声、この声は……。
そして "カチャッ" とドアが細く開いた。
ちょっと逆光気味の光の中から現れたのは、紛れもなくみどりさんだった。
「あっ、あのう……、あたし……」
「結衣?」
その途端ドアが大きく開き、彼女は両手を広げた。そしてその手をあたしの背
中に回して……。
「結衣ちゃ~ん!」
とあたしに抱きついてきたのだ。
「みどりさん」
もちろんあたしも、彼女を両手で "ギュッ" と抱きしめた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土