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あなたの燃える手で

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深夜バス 2


あたしは意気消沈し、タクシー乗り場からバス停へと歩いた。
確かこの辺りに、深夜バス『ポラリス』が止まっていたのだ。
こうしてここに立ってみると、改めてあの深夜バスの記憶が蘇ってくる。
白一色と思っていた車体に、細いピンクのラインで描かれた北斗七星。そして
同じピンク色で書かれたPORARISの文字。そしてあのバスの正式名称が『女
性専用深夜バス ポラリス』であったことも。

思い出すのは、みどりさんと別れたあの日のことばかりで、暗号の解読につな
がるものは何もない。
"3つの薔薇があなたをここへ誘うの" 。
何処? あたしをみどりさんの元へ誘ってくれる三つの薔薇は何処にあるの?
あぁ、みどりさん。難しすぎますこの暗号。もうあたしには全然分かんない。
やっぱり暗号なんかじゃ……。
気がつくとあたしは、バス停の前に立っていた。そこはポラリスから降りた、
降車専用のバス停だ。
「へぇ~、降車専用でも一応時刻表はあるのねぇ。あの日のバスは何時頃着い
たんだっけ。確か朝8時頃だったような……」
それはあたしの目が、時刻表の上を彷徨い始めた時だった。ふと赤いものが目
の隅に入った。白地に黒文字、白黒の時刻表に赤いものがあれば当然目立つ。
「んん? なにコレ」
あたしは1歩前に進み出て、その赤いものを見た。するとそれはなんと、小さ
な赤い薔薇の絵だということが分かる。しかもその薔薇には見覚えがある。
そうだこれは、『LOVE ROSES』 の小瓶のラベル。あの赤い薔薇を切り抜いたものに間違いない。
あの夜、みどりさんと一緒に飲んだバーボンLOVE ROSES。そのラベルは三角形
に並んだ3つの赤いバラだ。その薔薇を丁寧に切り抜いて、透明なテープで貼って
ある。小瓶のラベルのため、薔薇そのものも小さなものだ。しかし、この時刻表に
貼るにはちょうど良い大きさとなったようだ。

あたしは改めて時刻表を見た。
時刻表自体は何処のバス停にもある見慣れたものだ。そしてそこに、歌の歌詞
通り "3つの薔薇" が貼ってある。そのため薔薇の下には、当然何らかの文字
が隠れていることになる。あたしは薔薇を一つずつ、時刻表の上から順に剥が
していった。
最初は一番上の金沢駅の駅の上に1枚目が貼ってある。しかしこの薔薇だけ
は、糊で貼ってあるのか剥がれなかった。
そして2つ目は13時の13の上に。3つ目は13分の13の上に貼ってあった。
あたしはとりあえず写メを撮ると、その場を離れた。

さて、どういうことだろう。
薔薇は合計3つ。金沢駅の "駅" 。13時の "13" 。13分の "13" の上だ。
駅の薔薇は剥がれず。そして13が2つ。この2つの13の薔薇は剥がせた。
13とは何とも縁起の悪そうな数字だが、それが2つも。
あたしはもう1度パンフレットを見た。

 あなたと別れたあの場所に 薔薇の記憶を残しておくわ
 それは恋の暗号 3つの薔薇があなたをここへ誘うの

確かに分かれた場所に3つの薔薇はあった。その薔薇は一緒に飲んだバーボン
のもので、ある意味記憶とも言える。
さて問題は次だ。この3つの薔薇が、どうあたしを何処へ誘うのか。
あたしの思考はここで停止してしまった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土