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あなたの燃える手で

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九尾の猫達

26
『汐月』は、隣町にある二階建ての小さな和風旅館だ。その地味で入りやすい
佇まいの入り口に、月子は足早に入った。
入り口から二階に上がった一番奥、そこに『牡丹の間』はあった。
この部屋は階段の関係で、他の部屋と壁が接していない離れのような作りにな
っている。
中に入れば八畳の居間と六畳の寝室。それとバス・トイレという単純さだ。
居間には座椅子と木目のテーブル。テーブルには急須と二つの茶碗。それにポ
ットが置いてある。突き当たりの壁には座布団ほどの床の間があり、そこには
赤い牡丹の描かれた掛け軸の下に、三本の白い百合が生けられていた。
寝室には二枚の布団が並べて敷かれている。二つの部屋は唐紙で仕切られ、上
には太い鴨居があった。
そして十二時。部屋のチャイムが鳴った。


"カチャッ" と開いたドアから、最初に顔を覗かせたのはリリだった。
「こんにちは、月子様」
「まぁ、リリ。相変わらず時間通りね。ママは……?」
「こんにちは、初めまして……」
お呼びが掛かったとばかりに、瞳ママがリリの後ろから姿を見せた。彼女はリ
リに続くように中に入ると、後ろでドアの鍵をかけた。
「初めまして月子様。瞳です。宜しくお願い致します」
彼女はバッグを両手で前に持つと、深すぎるほど頭を下げた。
「いいえ、こちらこそ……」
笑顔で会釈をした月子は、ゆっくりと元に戻ったママの顔を見た。
冷たい清流のような切れ長の目に、スッと通った鼻筋。唐辛子のように赤い唇
は酷薄なまでに薄く、透き通るような白い顔は、整いすぎてどこか物の怪を思
わせる。
そんなママをあえてリリと比べるならば、リリは可愛い印象を与えながらも、年相応のフェロモンが匂い立ち、瞳は妖艶で、粘りつくようなフェロモンの持
ち主と言えるだろう。
一言で言ってしまうならば、タヌキ顔のリリにキツネ顔のママ。ということに
なるだろうか。

月子は二人を部屋に入れると座椅子に座らせ、自分はテーブルを挟んで正面に
腰を下ろした。
するとママが慣れた手つきでお茶を入れ、月子に差し出した。
「月子様、本日は十二時間コース,誠にありがとうございます」
「あらっ、いいのよ。せっかくママとも会えるんだし」
月子はお茶を一口啜った。
「まぁ、月子様ったら相変わらず……。それはそうと、今回は月子様が責めら
れたいとの事ですが……」
「えぇ、そうよ。たまにはね」
「で、どの程度のプレイまで可能か、最初に……」
「そうねっ、主人は今回長期出張で三ヶ月ほど戻らないし、後が残るような傷
がつかなければいいかしら」
「まぁ、三ヶ月も……」
「そうなの……。今回は特に長いんだけどね」
「で、後が残るような傷が……。でございますね」
「そうね、その辺で」
「さよでございますか。それでは後はわたくし達に "お任せ" ということでよ
ろしいですね」
「えぇ、いいわ。それでお願い」
「わかりました。それでは早速……。あっ、お茶、冷めないうちに……」
月子がお茶を飲み干すと、三人は取り敢えずといった感じで立ち上がった。
月子は浴室に行くつもりだったが、二人は月子を寝室へと連れ込んだ。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土