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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

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早速40人の客全員の所持品チェックが行われた。
検査は客の持ち物、服、そして体全身に及んだ。しかしルビーはどこからも出
てこなかった。ちなみにルビーの大きさは約3センチだが、回りには装飾が施
され、それを入れれば10センチ以上にはなる。したがって飲み込んだりする
ことは不可能だ。
そして入場券のチェックも同時に行われた。
この入場券は受付で半券が切られ、この半券にも同じ番号が付いている。
帰るときには持っている券を受付に返すことになっている。つまり券を持って
いない者は受付を通っていないことになり、受付に半券だけがある場合、それ
は現在入場中と言うことになる。
客は全員が半券を持っており、受付に残されている半券と照合した結果、全て
の券は受付の半券と合致した。これは全員が受付を通って入場していることに
なる。つまりこの中にムーンライトがいるとすれば、それは客として入場し、
今現在ルビーを所持していることになる。しかしルビーは誰も持っていない。

「竜胆さん、これってどういうことです? ルビーもムーンライトも消えちゃ
うなんて」
「分からん、分からんよ」
「ムーンライトは確かにここにいた、それはこの礼状が証拠だ」
「でも今はいない。宝石と一緒に消えた。消えてしまった……」
「そんなヒロミさん、そんなわけありませんよ」
「じゃ、どこにいるって言うの?」
「それは……、あたしにも、分かりませんけど」
「どうやらわたしは、ヤツを甘く見ていたようだよ」
「ジェシカさん……」
ジェシカが落ち込んでいるのが、後ろ姿でもわかった。
「発煙筒で視界を奪い、その隙に警報装置を切り、獲物を盗んで礼状を置いて
消える。まったくミラクルだ。悔しいがヤツはパーフェクトだよ。世界中の警
察が取り逃がすのもよく分かる」
「今回も我々の負けだな」
「そんな、竜胆さんまで」
「でも、この密室から人間と宝石が消えてしまった。ムーンライトはどこから
来てどこへ消えたんだ。センサーのスイッチを切り、いや、百歩譲ってセン
サーのスイッチは外から切れるとしても、指紋認証は……? あたしの指紋
じゃなければ開かないはずのガラスケースを、どうやって開けた」
「もしかしたら、一旦この部屋のどこかに隠して、後で取りに来るとか……」
「当然この部屋の捜索はするが、おそらく出てはこないだろう」
「ですよね……」
カンナも腕を組んで考えた。
「あぁーもう、どうなっちゃってるんだろう。まだこの部屋のどこかに隠れて
るのかな?」
ふと見上げた天上に、白煙を出す時に開けた排煙ダクトの穴がある。
「まさかなぁ~」

約2時間に及んだ所持品チェックも終わり、客は全員帰された。
その際の身分証明もチェックされたのは言うまでもない。
「消えてしまった。本当に、まるで月が雲で隠れるように」
「そんな竜胆さん、諦めないでくださいよ」
「いや、そう言うわけではないが……」
「チャンスはあと1回、『クラリスの首飾り』だ」
「そうですよ。今度こそ、3度目の正直です」
カンナは1人意気を吐いた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土