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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

28
展示室内に徐々に視界が戻って来た。
「ルビーは、ルビーはどうした……」
まだ白く煙る室内を、竜胆ら4人はガラスケースに駆け寄った。
「無い、無いぞ……」
「ホントだ、無い。どうして、ルビーはどこにいったんです?」
「ルビーも煙のように消えたとでも……、まさか」
「どうやって指紋認証や重要感知を……、警報音は鳴らなかった」
「確かにそうですね。ホントにどうやったんでしょう」
「重量に変化があれば鳴るはずなのに……」
「竜胆、見ろ、センサーのスイッチが切られている」
「えっ? あっ……」
竜胆はその場にしゃがむと、センサーのスイッチを覗き込んだ。通常の位置か
らでは見えないスイッチが、オフになっている。
「どうしてここにスイッチがあることを知っていたんだ?」
その時、展示室の一隅に集められた、40人の客達をジェシカが見た。
「大丈夫、ヤツはMouse in a trapだ」
「えっ? ネズミ捕り……??? ヒロミさん今のは?」
「袋のネズミだ、って意味よ」
「あっ、なるほど」
「カンナの『鍵締めちゃうぞ作戦』がうまくいったわ。煙が出てドアが閉めら
れてから、それこそネズミ1匹この部屋から出ていないもの」
「そうか、そうですよね。あたし自分で考えたのに……、忘れてました」
「あの客達の中に、怪盗ムーンライトがいる……」
「はずですよね」
ヒロミも期待を込めて言った。
「あっ、竜胆さん、あれ……。また布の下に……」
「まさか……」

台座に掛かった赤いベルベット。その下に何か薄いものが差し込まれたような
段が付いている。
カンナはそれを指差しているのだ。
竜胆はベルベットをまくった。するとそこにはまたあの赤い洋封筒があった。
「礼状」と書かれたその中には、三つ折りになった便箋が入っている。
「礼状。これって、また……」
カンナが不安そうな目を竜胆に向けた。
竜胆は便箋を引き抜くとそれを読んだ。

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『アルセーヌの瞳』 は我が手の中に。
この手に抱かれし物は全て消えゆく。
それが運命。

怪盗ムーンライト

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「や、や、やっぱりムーンライト、ムーンライトがこの中にいる」
カンナはもう過呼吸気味だ。
「よし、所持品チェックだ」
4人は40人の客に向かって歩き始めた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土