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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

26
「土曜日のお昼かぁ。一番混雑しますよねぇ、この時間帯って……」
カンナは竜胆とジェシカを尻目に1人つぶやいた。
「混雑? なるほど確かに混む時間帯ではあるな。月光は人に紛れて」
「しかし、ルビーは前回と同じケースに入っている。ロープを張った回りには
警備の人間もいる。つまり一定の距離を置いて近づけない状況だ。まさか警備
の人間を押しのけて盗むわけにもいくまい」
ジェシカも腕を組んで考え始めた。
「でもムーンライトって、そういう状況でも、今までまんまと盗んで行きまし
たよね」
「確かに」
「いつも裏をかかれるのは警察で……。だから今度はこっちが裏をかいてやり
ましょうよ」
「何か考えがあるのか? カンナ」
「はい。あたし、いいこと考えちゃいました」
「ほう、聞かせてもらおう」
「当日は休館にはしないで、普通にお客さんを入れるんです」
「それで?」
「それで、もし何か起こったら、ドアを閉める」
「ドアを閉める?」
竜胆は不思議そうな顔でカンナを見た。
「Good idea……」
ジェシカはカンナの言わんとしていることが分かったとばかりに頷いた。
「閉じ込める……、ってことだな。カンナ」
「そうです、ジェシカさん。もし何か起こったら、ドアを閉めて展示室内の人
間全員を閉じ込めるんです。3階の展示室の出入り口は1ヶ所、窓ははめ殺し
ですから開きません。出入りできるのは入口のドアからだけです」
「つまりその時、室内にいた人間の中に月光がいるってことか」
「はい、あとは所持品チェックをしてルビーが出てくれば……」
「まぁ、持っていた人間が月光とは限らんが、盗難は防げそうだな」
「はい、どうです? この作戦。名付けて『鍵締めちゃうぞ作戦』です」
「その作戦名はともかく、意外とイケルかもしれないな」 
「ドアの近くに警備の人間がいても、別に不自然ではない。もし強引に出よう
とするヤツがいれば……、それこそ怪しい」
「ムーンライトがどうして昼間の混雑する時間帯を狙ったのか、それは分かり
ませんけど、とにかく閉じ込めてさえしまえれば……」
「よし、取り敢えずそれも考えておこう」
2人がカンナに微笑みかけると、カンナは満足そうな顔で微笑み返した。


『ルパンの宝石展 Ⅱ』の開催前日、七海美術館3階の展示室は前にも増して
厳重な警戒態勢が取られた。
各部屋の盗聴器の有無は勿論、ガラスケースには新たに重量感知が追加され
た。もし感知器が作動すれば警報音が鳴るしくみだ。
防弾ガラスに指紋認証は前回同様で、指紋は今回も竜胆のモノが使われる。
そして今回は搬入時、銀行の金庫から警察の護衛が付き、ルビーがケースに入
れられる直前、その場で宝石鑑定がされた。この鑑定は予告当日まで毎日2回
行われる。24時間の監視体制、防犯カメラ、人員配置などは前回同様だ。
ガラスケースは展示室の中央に設置され、予告日当日は半径2メートル以内に
立ち入られないように、ロープも張られることとなった。
そして客には通し番号を振ったの入場券を配ることになった。

『ルパンの宝石展 Ⅱ』の開催から、1週間は何事もなく過ぎた。
そして犯行予告の土曜日、時刻は正午になろうとしていた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土