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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト

24
「当日ドライバーが歩いた道順であたしを展示室まで案内して」
「はい」
カンナが先頭に立ち、その後ろに3人が付き従った。
「当日は駐車場からこの正面の入口に……」
カンナは自分が先に館内に入るとエレベーターへと歩いた。
「そしてこのエレベーターで3階に上がりました」
カンナが3階のボタンを押すと、エレベーターは音もなく3階へと到着した。
「そしてここから展示室へと向かって……」
4人は廊下を展示室まで歩くと、カンナが扉を開くのを待った。
「中には既に6人の警官が警備していました」
「これが展示室……。思ったより狭い」
「本来美術品の展示は1階のメインホールで行われる。しかし今回はこちらに
移した。狭い方が警備もしやすいからな」
「なるほど。それで指輪は」
「今は撤去していまいましたが、ここにあった防弾ガラスのケースに……」
「そして24時間後、礼状がケースの中から発見された」
「そうです」
「するとやはり、そのドライバーがムーンライト……」
「その可能性が高いと思われます」
ジェシカは突然ポケットから携帯のようなものを取りだし、アンテナを伸ばす
とスイッチを入れた。すると一定のリズムでアラーム音が鳴り始めた。
それを見たカンナが、興味津々といった感じで近づいた。
「ジェシカさん。それ、なんですか?」
「これ? これは盗聴器を発見する機械よ」
「盗聴器発見器? ですか……」
「もし仕掛けてあったら、こちらの作戦が全て向こうの知るところとなる」
「はぁ、でも盗聴器なんて」
その時アラーム音の間隔が狭まり、どんどん早くなっていった。
そしてジェシカはカーテンの裏から、黒い小さな盗聴器を発見した。
「ホントに……」
カンナは目を丸くして驚いた。

盗聴器は3階の展示室と館長室、1階と2階の事務所から1つずつの、計4つ
が見つかった。
「すると警備体制や人員配置、そして宝石の搬入時間も、すべてが月光に筒抜
だったわけか……」
「残念だが、そういうことになるな竜胆」

そして翌日、ダイヤを運搬した車のドライバーが廃屋で発見された。彼に怪我
はなかったが、縛られていたため発見が遅れたのだ。
彼から取った調書では、突然誰かが車の前に飛び出し、人を轢いたと思った彼
が車から降りると倒れていた人間が起き上がり、彼を気絶させた。気が付くと
廃屋の中で縛られていた……。と言うことだった。
調書にはドライバーの証言として、こんなことも書かれていた。
>>>その時は確かに轢いてしまったと思った。あんなことが出来るなんて、
まるでサーカスでも見ているようだった>>>

「サーカスだと……。月光が軽業師だとでもいうのか」
「でも残念ですねぇ。いくら暗がりから飛び出したとはいえ、もう少し人相や
風体が分かれば……」
「あぁ、まったくだなカンナ」
その辺は竜胆も同じ意見らしい。
「当たり屋のように轢かれて見せ、当て身でドラバーを気絶。あとはその場で
入れ替わり、何食わぬ顔で偽のダイヤを届ける。まったくやられたよ」
その時ジェシカが2人に歩み寄った。
「今までも分からなかったことが今も分からない。プラスマイナス0だ」
それは優しさからか負けず嫌いからか、竜胆には分からなかった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土