2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

怪盗ムーンライト

18
ダイヤは防弾ガラスのケース内に入った。
このガラスを砕くにはマグナムクラスの拳銃がいる。美術館の内外に設置した
監視カメラも、今のところ怪しい人物を捉えてはいない。
ドライバーがジュラルミンケースを開け、ダイヤを手袋で持ち、目の前の台座
に置くまで、竜胆や警官達は拳銃を構え、窓の外、ドア、天上や床など、あら
ゆる場所を警戒していた。
無事にダイヤがケース内に入ると、竜胆の合図で拳銃を腰に戻した。
この時点で日付は5月1日、午前0辞3分になっていた。
「これで一安心ですね」
「もうカンナったら、何言ってるの」
ヒロミがヤレヤレといった感じで答えた。
「ムーンライトが予告したのは5月1日。つまり勝負はこれからよ」
「その通り、今から24時間が勝負だ」
竜胆ら3人は、そのまま展示室内の警備に付いた。

しかしやがて朝になり昼が過ぎ、夜になっても何も起こらなかった。

「竜胆さん、ムーンライトは諦めたんでしょうか」
「そんなはずはないと思うが……」
「でも、あと10分で明日になっちゃいますよ。それともあと10分で盗み出す
つもりですかね?」
「確かにそれも考えにくいが」
ダイヤはガラスケースに入ったまま1ミリも動いてはいない。また外の監視カ
メラが怪しい人物を捉えたという報告も、1回も受けてはいなかった。
そして時計は5月1日の終わりを告げ、日付が変わった。
「竜胆さん」
「ヒロミ、カンナいくぞ」
3人は展示室中央のガラスケースに歩み寄った。
竜胆が指紋認証のタッチパネルに指を押しつけ、ガラスケースを上げた。
どこから見てもダイヤに異常はない。24時間前に置かれたままだ。
「ムーンライトはどうしたんでしょう? 竜胆さん」
「わからん……」
「きっとあたし達の鉄壁の警備に恐れを成して諦めたんじゃ……」
「そんなヤツではないと思うが……。取り敢えずはダイヤを鑑識……」
「あれっ? 竜胆さん。ここ……、何かあるみたい……、ですけど」
カンナが赤いベルベットの端を指差した。
「なんだカンナ、どうした」
「ここです、ほらっ、なんか段が付いています」
見れば確かに、台座に掛かった赤いベルベットの下に何か薄いものが差し込ま
れている。
竜胆がベルベットをまくると、そこには見覚えのある赤い洋封筒があった。
その表には「礼状」と書かれ、中には三つ折りになった便箋が見える。
「これって、ムーンライトの赤い封筒じゃ……」
驚くカンナをよそに、竜胆は便箋を引き抜くとそれを広げて読んだ。

>>>

『ルパンの涙』 は我が手の中に。
この手に抱かれし物は全て消えゆく。
それが運命。

怪盗ムーンライト

>>>

Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土