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あなたの燃える手で

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怪盗ムーンライト


七海美術館からの連絡は、『怪盗ムーンライト特別捜査本部』の主任である
『竜胆 晶(りんどう あきら)』の元へと伝えられた。
「ここ数年大人しくしていると思ったら……、ついに現れたか月光。しかも3
年前に続いてまた日本か……」
「ホント、このまま出てこなくていいのになぁ……」
赤いフレームの中で、クリッとした目を細めて望月カンナが溜息をついた。
「そうはいかないわよカンナ。あんなコソドロさっさと捕まえて、こんな捜査
本部は解散して貰わなきゃ。警察は忙しいんだから」
水無ヒロミは、キリッとした目をカンナに向けた。
「それは分かってますけどぉ……。ヒロミさんだってムーンライトがただの泥
棒じゃないこと分かってるくせにぃ」
「でもアイツが現れる度にこうやって捜査本部が設けられて、あたし達が駆り
出されるのよ。こっちはこっちで抱えてる事件があるっつぅ~の!」
美人だけに、怒るとその顔は般若のような形相だ。
「まぁ、そうですけどぉ……」
「それに世界中で何回アイツを取り逃がしてると思ってるの? あたし達やら
れぱなしじゃない。これじゃ世界の警察のメンツ丸潰れよ」
「はぁ、まぁ……」
首をすくめるカンナの肩で、内巻きの髪がプルンと揺れる。そんなヒロミの剣
幕に圧倒されるカンナを見て、竜胆が割って入った。
「まぁまぁ2人とも、とにかく月光が現れなきゃ話にならない訳だし、それに
今回はチャンスかもしれないわよ」
書類から顔を上げた竜胆は、いたって明鏡止水といった心持ちのようだ。その
語り口に焦りの色はない。
「どうしてですか?」
カンナは竜胆を見ると、差し伸べられた救済の手に遠慮無くすがりついた。
「今回予告状が届いた七海美術館は、3年前にも被害にあってる」
「それじゃ、これで2回目?」
「そうね、1回目は3年前。あのダビンチの晩年の名作、『バビロンの乙女』
を盗んでいったわ」
「あぁバビロンの……。なんかありましたね、そんな事件」
「まったくいいわねアンタは。こっちはその頃からアイツと鬼ごっこしてんの
よ。わかる?」
ヒロミの剣幕はまだ治まらないらしい。
「2回目と言うことは、こっちもそれなりに用意が出来るってことでしょう」
「ナルホド、ぶっつけ本番よりはいいですよね、うんうん」
「なにがうんうんよ、アイツはそんな甘くないわよ。同じ手口は2度使わない
のがアイツの流儀。今回だって3年前と同じことするとは思えないし……」
「確かにそうね。でもその流儀が自分の首を絞めることにもなると思わない」
「えっ?」
ヒロミは怒りの呪縛が解けたように目を点にした。
「つまり、それだけ向こうが手詰まりになるっていうことよ」
「同じ場所で違う手口。まぁ元よりそう何通りもあるとは思えませんからね。
チャンスといえばチャンスかも……」
ヒロミの目が、光明を見いだしたかのように輝きだした。
「そうでしょう」
「そうですよヒロミさん」
「今回は猫の子1匹通入れず、アリ1匹出さない。完全包囲網よ」
「うん、やりましょう、竜胆さん。カンナ」
ヒロミは人が変わったように希望に満ちあふれた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土