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あなたの燃える手で

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貴婦人とメイド

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この館の食堂からは庭の芝がよく見えた。芝の向こうには大きな木が茂り、まるで高原の朝のような気分に浸れる。
朝の食卓はバタートーストの香りで満ちていた。トーストの横には苺ジャムとマーマレードが入った小鉢が置かれ、スープマグにはパンプキンスープ。
そして白い陶器の丸皿にはスクランブルエッグと柔らかなアスパラガスが添えられていた。
麗子が食卓に着いた時、マリアがプチトマトの載ったサラダとドレッシングを運びながら言った。
「どうですか?この新しいメイド服。ちょっとクドイですか?」
「あら、そんなことないわよ。とっても似合ってるわよ。マリア」
そのメイド服は、白いスタンドカラーの付いたミドル丈の黒のワンピースだ。白いスタンドカラーには細身の黒いリボンが結ばれ、その回りにはネックレスのようなバラ模様の白いレース。腰には大きなフリルのついた白いエプロン。袖口にも白が使われ、全体的にクラシカルで清楚な印象を与えた。そしてマリアの黒いストレートのロングヘアーの頭には白いフリル付きのカチューシャが載り、メイドらしさを一層際立たせた。
「今日はベルランドホテルで会食があるから、夕食はいらないわ。帰りは11時頃になると思うから、先に休んでいなさい」
「はいっ。麗子様」
サラダをトーストの横に置きながらマリアが答えた。
「それから今度のモーツァルトコレクション。あなたのチケットも頼んでおいたから、一緒に行きましょう」
「えっ、本当ですか? ありがとうございます」
マリアの顔が花が笑ったように明るくなった。モーツァルトコレクションは一流の著名人を招いて開かれる、年に一度開かれるリサイタルで、毎年マリアが楽しみにしているものだった。
麗子は手早く食事を済ませた。普段時間に追われている彼女の習慣のようなもので、特に朝はその悪習がでた。それを知っているマリアは、グレープフルーツジュースを早めに持ってきた。
「ふふっ、忘れなかったわね」
「はいっ、グラスについだジュースをフリーザーに入れて、よぉ~く冷やしておきました。」
よく見ると、グラスが早くも汗をかき始めている。
麗子がそのグラスに唇を付けた。
「本当、よく冷えてるわ。美味しい。やっぱり100%ね。ジュースは」
「うふぅ、面白い。麗子様」

マリアは麗子の前に立ち玄関の扉を開けた。グレーのスーツで固めた麗子がマリアの前に出た。エントランスには白いBMWが付けられている。
「じゃ、行ってくるわね」
麗子はマリアの笑顔に自らも微笑むと、車に乗り込みドアを閉めた。
「いってらっしゃいませ」
マリアは麗子に深々と頭を下げた。初秋の風がマリアの首筋を擽り、肩口で切り揃えられた真っ直ぐな黒髪を、カーテンのように優しく揺らした。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土