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あなたの燃える手で

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眠れない羊たち




眠れないたち





序幕:
綿雲を引き千切り、東風が吹く。
東風は長い海原を吹き渡りこの島にぶつかると、数十メートルの崖を一気に駆
け上がり、島を撫でるように吹き渡っていく。
その東風に逆らうように、全裸の女が崖に向かってフラフラと歩いている。
虚ろなその目には、目の前に迫った崖も映らず、遙か彼方の水平線しか映って
いないようだ。
長い髪を東風になびかせ、裸足の足で草を踏みながら、女は崖のすぐ手前で歩
みを止めた。
しかしそれも一瞬、彼女は躊躇うことなく足を宙に踏み出した。

まだ薄暗い夜明け前、女は潮騒渦巻く海へと吸い込まれた。


第1話:女蜂島 1
『女蜂島』(めほうじま)
女蜂島は周囲20キロ弱の小島である。海岸線のほとんどは磯と崖で、砂浜は
50メートル程度しかない。
島民は約千五百人。漁業が主な収益だが、この島の「蜜百合」という百合から
取れる蜂蜜は、芳醇な香りと品の良い甘さが全国的にも有名で、島の重要な収
益の一端をになっている。
集落は島の北側(表)に集中しており、そこは「女蜂村」と呼ばれている。
この村は女系の家が多く、島民の三分の二は女性である。
携帯は島の南側(裏)では通じない。連絡船は週1便しかなく、島への食料物
資補給は、全てこの連絡船でまかなわれている。

『島の奇習』
この島に、昔から「めかくし様」と呼ばれる奇習があることは、以外と知られ
ていない。
「めかくし様」は、島を疫病や飢饉災害から守るとされている古代信仰だ。
「めかくし様」には年に1度、「贄」と呼ばれる生け贄が必要とされていた。
もちろんこれは古人の行った習わしで、現在の日本で認められるわけもない。
ちなみにこの「贄」は常に女とされ、この習わしの際に女が1人いなくなるこ
とから、「めかくし様」とは、「目隠し」ではなく、おそらく「女隠し」では
なかったかとされている。
しかし現在に残る文献にも、残念ながら「めかくし様」としか記されておず、
その真偽の程は判らない。

『蜂天寺』(ほうてんじ)
島の南側(裏)に、唯一の社である「蜂天寺」がある。
この蜂天寺には、「本殿」と「奥の院」があり、「奥の院」は今でも男子禁制
の聖域とされており、女性でも普段は立ち入り禁止になっている。
なお蜂天寺と既出の奇習との関係は、今ではかなり薄いものと推測される。


「女隠し様かぁ。やっぱり今回最大のミステリーはこれね……」
女蜂島に向かう連絡船に乗り込んだ夏宮真紀は、船室で読んでいた「女蜂島の
案内」と書かれた小冊子を枕元に置いた。
今風に言うと歴女である真紀は、日本の奇習奇際が大好きだ。自らそういった
催しを捜しては、自分の足で現地を訪れている。
円い船窓から見えるのは、真っ暗な海面だけだ。しかし真紀の心は躍ってい
た。正直、怖いもの見たさと言ったところが大きいのだが、気持ちはもうすっ
かりミステリーハンター気取りだ。

「連絡船は周に1便。これでもう1週間は帰れないわけね。いいわよ、上等
じゃない。この夢女のマープルが、めかくし様の正体を暴いてやるわ」
これで暫くはあの街ともお別れだ。あの街に帰ったら、商店街の入口にある
あの喫茶店で、今回の旅行記をまとめよう。
真紀は1人悦に入りながら毛布を被ると、静かに目を閉じた。
そして毛布の下で、なんとなく右手で股間に触れた。まるでそれがスイッチと
なったように、右手は履いていたスウェットの中へと潜り込み、ショーツの上
からソコに触れた。
それから真紀はひとしきり快感を貪ると、いつしか眠りについた。

その頃になって東風が強まり、海面には白波が目立ち始めた。
東風に流された綿雲が月光を遮ると、水平線に見えていた小さな島影は、漆黒
の闇の中へと飲み込まれた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土