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あなたの燃える手で

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官能作家二階堂月子

【21】
彼女が『蕩け妻』の原稿を取りに来たのは、締め切り日の昼過ぎの事だった。
玄関のインターホンを通し、原稿を受け取りに来た旨を伝えるその可愛らしい
声に、あたしと先生は目を合わせた。
何故ならそれまで先生の担当は、荒木という男性だったからだ。
「あらっ、いつもの……、荒木さんは?」
「あっ、荒木は先日交通事故に遭いまして……」
そんなことをサラッというその声は、どこかアニメ声にも聞こえる。
「あらそう……。ちょっと待ってて、今開けるから」
来客はいつもあたしの担当だったのに、この時の先生は彼女の声に触発されて
か、自分から率先して玄関へと向かった。
勿論あたしも先生の後ろから付いていく。
そして玄関のドアを開けたとき、あたし達は水嶋璃子と始めて対面した。

彼女の第一印象は、"渋谷や原宿を歩く今時の少女" だった。
歳は二十歳前後だろうか? クルクルとパーマの掛かった栗毛色の髪を肩口か
ら前に垂らし、度の入っていない黒縁のメガネは、彼女の可愛さに見事に拍車
を掛けている。半袖のシャツから覗くその色白の美肌は、思わず手の伸ばして
触りたくなる程ツルツルだ。
身長はあたしより10センチくらい低い、たぶん155センチ前後だろう。
そして何と言っても目を引くのは、その胸の大きさだ。シャツを下から大きく
押し上げたそれは、歩く度に波打つのは間違いない。
あたしの見立てでは90は確実にある。もしかしたらもっとあるかも……?
彼女を見ていると、最近よく耳にする読者モデルのような、きっと就職するま
では、いやきっと今でも、休日にはそんなファッションに身を包み、あの辺り
の街を歩いているのではないか。そんな気がしてくる。

「初めまして、水嶋璃子と申します。本日は原稿を受け取りに参りました」
彼女は玄関に1歩入ると、改めてそう言ってペコリと頭を下げた。
「暑かったでしょう。どうぞ上がって。冷たい麦茶でも出すから。ねっ」
「あっ、はい。失礼します」
彼女は靴をモゾモゾと脱ぐと、先生とあたしに続いて居間へと入った。
「どうぞ、座って」
「あっ、はい……」
そう言って彼女はちょこんとソファに座った。背筋を伸ばしたまま背もたれに
寄り掛からない、その姿がまた可愛い。
先生は彼女の正面に座った。
あたしは用意しておいた原稿と、麦茶のグラスを3つ載せたトレイを持って先
生の隣に腰を下すと、まずそのグラスを彼女の前に置いた。
早くも汗を掻き始めたグラスを、彼女が見つめる。
そんな彼女を先生が見つめた。
「えぇっと、水嶋さん……でしたっけ……?」
「あっ、はい。水嶋璃子です」
彼女は先生に目を移した。
「交通事故って、荒木さん大丈夫なの?」
「あっ、はい。。腰の打撲で……、全治1週間だそうです」
「あらそう、大したことなければいいけど……」
「大丈夫ですよ。荒木さん、学生時代アメフトやってたらしいですから」
「えっ? アメフト?」
言いたいことは判るが、ちょっと違うような……。
「えぇっと、これ『蕩け妻』の原稿です」
あたしは横から口を出すように、膝に置いていた原稿を彼女に渡した。
「あっ、はい。確かに……」
今度は彼女がそれを膝の上に置く。ちょっと短めのスカートが、座ったことで
彼女の白い太腿を半分くらい見せてくれている。
先生はもう、虜にでもなったように彼女のことを熱く見つめている。その視線
は尋常ではない。
先生、変なこと言い出さなきゃいいけど……。
そんなあたしの心配は、杞憂では終わらなかった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土