2ntブログ

あなたの燃える手で

Welcome to my blog

アンティークドール

15
「良くなかった?」
あたしは老婆の顔を見た。
「それからあたしは、日本に来て骨董屋を始めたんだ。すると良くできたこの
人形を欲しがる客もいた。あたしにとっては形見の人形だから、初めは売った
りしなかったんだよ。でも当時は貧しかったからねぇ、とうとうこの人形を手
放さなければならないときが来たのさ」
「えぇ、それで……、手放したんですか?」
「そう、ある人にこの人形を売った。でもね、その人は数日もするとこの人形
を返しに来たんだ。ちょうど今のお嬢ちゃんのようにね」
「……」
「それが何人も、何年も続いてもう100年さ」
「もう100年って、おばあさん今おいくつなんですか?」

老婆はあたしを見上げると、ニヤリと笑った。
突然あたしの周りのが竜巻のように回転し始め、足元が床から浮き上がり、フ
ワリとした浮遊感に全身が包まれた。無数の骨董品が竜巻と共に回転しなが
ら、あたしと共に浮き上がっていく。

気が付くと、あたしは西洋の墓地にいた。
目の前には大きな石の十字架の墓石があり、そこにはキャサリン・ヘイズとい
う名前が刻まれている。十字架の手前には大きな石蓋があった。
そしていつの間にか、老婆があたしの横に立っていた。片手にはアンを抱いて
いる。
「これがキャサリンのお墓だよ」
「えっ?」
混乱するあたしをよそに、老婆はアンをその石蓋に置いた。
「さぁ、手伝っておくれ、お嬢ちゃん」
老婆は石蓋に手を掛けそれを押し始めた。あたしも一緒に老婆の横で、石蓋を
押し始めた。
すると以外にも重さも感じずに石蓋がスライドし、ポッカリと暗い穴を開け
た。恐る恐る中を覗き込んでも、そこは真っ暗でなにも見えなかった。
老婆はあたしの横でアンをその真っ暗な中に落とした。
アンは闇に吸い込まれるように消えた。
「ありがとう、ありがとうお嬢ちゃん」
老婆は何度もありがとうを言うと、辺りの景色と共に消えてしまった。


あたしは目が覚めた。
頭の中ではまだ夢を引きづったままで、ベッドでまどろんでいた。
どうなっているんだろう……?
あたしは窓辺のアンを見た。アンは相変わらず出窓に寄り掛かってあたしを見
ている。
「やっぱり夢か……」
でも、なんか昨日までのアンと違う。
目のや服の色が褪せ、髪も艶が無くなっている。まるで一晩で100年の時が過
ぎ去ったようだ。
なんとなくモヤモヤとした胸のわだかまりを感じながらも、あたしは出窓のアンに近づいた。
「やっぱり夢。夢だよね、アン」

Comments 0

Leave a reply

About this site
女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
About me
誠に恐縮ですが、不適切と思われるコメント・トラックバック、または商業サイトは、削除させていただくことがあります。

更新日:日・水・土