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あなたの燃える手で

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アンティークドール


「その人形が欲しいのかい?」
心の奥を見透かすような目で、老婆はあたしをジッと見る。
「えっ、あっ、は、はいっ」
買うと決めたワケじゃないけど、なんとなくあたしは返事をしてしまった。
でもそれは、この老婆にしてみれば "買います" と言ったように聞こえたかも
しれない。
「いいんだね……、ホントにその人形で」
「えっ? えぇ……」
あたしがなんとなく躊躇していると、老婆が意外なコトを言った。
「いいのかい? その子は悪戯好きだよ」
「悪戯好き……?」
「まぁ、そう言ってもわからないだろうけどねぇ~」
「はぁ……」
「本当にイイんだね……。その子で」
最終確認というように、老婆が念を押す。
「はっ、はい、コレ下さい」
あたしはそう言っていた。
別に後悔はしていない。可愛い人形だし。ン万円と思っていた値段が破格の
3000円だ。ホントは3000円でもチョット痛いけど、来月っていうか、お正
月にはお年玉という臨時収入も入る。そう思うと少し気が大きくなった。
「そうかい、それじゃ……」
老婆はそう言って、黒猫を抱えながら重そうに腰を持ち上げた。
そして人形を大切そうに抱えると、レジのあるテーブルにそれを置き、自分は
店の奥へと姿を消した。

老婆は人形を入れる箱を持って戻って来た。
黒猫はもういなかった。
「この子の名前は『アン』だよ」
「アン?」
「そう、アンっていうんだよ。可愛いだろう」
「はぁ……、そうですね」
少し返事に困ったけど、取り敢えずそう答えておいた。
老婆は箱の蓋を開けると、人形のスカートを整えながら、丁寧に箱の中にそれ
を入れた。
まるで棺桶に横たわったような人形。
老婆はそれを愛おしそうに見ると、ゆっくりと蓋を閉め丁寧に包装を施した。
「はいどうぞ、お嬢ちゃん……。大切にしておくれね」
老婆はニッコリと微笑むと、あたしにその箱を渡した。
「はい……」
あたしは3000円を払うと、その骨董屋を後にした。


自分の部屋で人形を箱から出すと、それを両手で目の高さに持ち上げた。
こうして持つと結構大きい。身長50センチってトコロかしら。
あたしは人形の足元から顔へと視線を移していった。
そして黙ったままの人形と目が合った。
「ふぅ~ん、アンかぁ~。あなたはアンっていう名前なのね」
アンは青い目で、あたしをジッと見つめている。
あたしはアンを出窓に座らせた。するとアンはスグに右側に傾いた。
「あらあら、ちゃんと座って」
数回直してもスグに右に傾くアンを、あたしは出窓の壁により掛からせた。
「名前はアン、アンでいっか。可愛い名前だし、アンティークドールのアン」
あたしはアンに背中を向けると、箱と包装紙を片付け始めた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土