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あなたの燃える手で

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アンティークドール


 ☆☆☆ 2010 Xmasスペシャル ☆☆☆



            アンティークドール





PROLOGUE
小高い丘にある小さな公園。
いつもの学校帰り、美羽はその小さな公園に入り込んだ。
12月の日は短く、夕日に照らされたジャングルジムやブランコが、すでにその
影を長く伸ばしている。
美羽は学生カバンをブランコに置くと、自分は隣のブランコに座り、両脚で地
面を蹴って勢いよくブランコを漕ぎ始めた。
ブランコは振り子のように揺れ、師走の風が水色のマフラーをはためかせた。
「もうすぐクリスマスかぁー。今年も早かったなぁ-」
白い息の先には、真っ赤な夕日がマンションの隙間に沈もうとしている。
空一面が茜色に染まり、今日の夕日は特別綺麗だ。
「凄~い! 空が燃えてる見たい。たまには歩いて帰ろうかなぁ……」
美羽はいつもはバスに乗る道を、今日は歩いて帰ることにした。



バスから見る景色とは全然違う街並み。あたしはそれがとっても新鮮だった。
「たまには歩いて帰るのも……、あれ? こんな所にこんな店、あったけ?」
あたしは細い路地の先に、1軒の店を見つけた。
「こんな路地、バスからじゃあっという間に通り過ぎちゃうもんね」
そもそもこの路地の存在自体あやふやだったけど……。なんとなく自分を納得
させながら、あたしはその路地に足を踏み入れた。

「へぇ~、何屋さん……?」
あたしはなんとなく可愛げな、得体の知れないその店に近づいていった。
最初は小さかった看板の文字が、徐々に読めるようになってくる。
「んん? 何々……Z・O・L・A。ゾラ? 骨董屋さん?」
そこは確かに骨董屋だった。
見慣れない大小のアンティーク雑貨が、狭い店内に溢れかえっている。
「へぇ~、可愛いじゃん……」
骨董屋を覗き込むと、あたしはそこに1体のアンティークドールを見つけた。

「うわぁー、コレいいなぁ~」
普段アンティークドールが欲しいなんて思ったコトもないケド、何故かこの人
形には惹かれるものがあった。
白いフリルのいっぱい付いた水色のドレスは、腰から下がフワッと広がって、
内巻きの金髪の髪には、細かな花飾りの付いた帽子が斜めに載っている。
顔は磁器のような硬質のモノで作られていて、笑っているワケではないけど、
怒っているワケでもない。そんな微妙な表情だった。
そして何と言ってもあたしが惹かれたのは、その綺麗な綺麗な青い目だ。
こんな目に生まれたかった。その目はそんなことを思わせる。
「コレ、いくらだろう? ン万円するんだろうなぁ~」
そんなことを思って値札を見た。
「えっ? 3000円? ホントに……、もしかして買える? 買えるじゃん」
あたしは信じられなくて、もう1度0の数を数えた。やっぱり間違いない。
「どう見てもン万円だけど、ホントに3000円でイイのかなぁ~」
あたしは指先でその人形の金色の髪をそっと撫でると、店の人を探した。
「あのう~……、すいませぇ~ん」
「なんだい?」
するとすぐ目の前におばあさん、いやおばあさんと言うよりは老婆と言いたく
なるような、そんな女の人が座っている。
「えっ? いつから? いつからソコにいたの」
いくら運動音痴のあたしでも、人間1人目の前にいて気が付かないなんて。
チョット自分に情けなくなりながら、あたしはその老婆を見た。

その老婆は黒い司祭服のような、チョット変わった服を着ていた。
おまけにその膝の上には、黒い服に溶け込むように黒猫が丸くなっている。
皺だらけの手で撫でられている黒猫は、気持ちよさそうに目をつぶっていた。
「あのう、この人形……。ホントに3000円? ですか?」
「あぁ、そうだよ。3000円と書いてあるなら3000円さ」
あたしの見立てでは推定100歳。
きっと若い頃はかなりの美人だったはずと思えるその老婆は、下からあたしを
見上げるように見つめると、ニヤリと笑った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土