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あなたの燃える手で

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こちら夢の森探偵社

35
「先生、どうしてこんな所に……?」
エリの両腕は、まだエマの片腕に巻き付いている。
「エリちゃん……。エリちゃん、ごめんなさいね……。あたし……」
「……」
「あたし……、エリちゃんが好きで……、知らないうちにこんなコトをしてし
まって……」
エリの腕がエマの腕からゆっくりと離れた。
「本当にごめんなさい」
「先生あたし……。でも……、奈美先生で良かった。他の、何処の誰かも知ら
ない人より、奈美先生で、奈美先生で良かった」
エリは涙声になっていた。
「エリちゃん、許してくれる?」
エリは黙って何度も頷いた。
「ありがとう、ありがとうエリちゃん……」
奈美の頬にも、涙が伝い落ちている。
その時、エマが大股に1歩前に進み出た。

「北島さん、今日のトコロは帰りましょう」
「えっ? 警察には……」
奈美は驚いたようにエマを見た。
「エリさんもこう言っていますし、わたしの依頼主もおそらく警察には……」
「本当に、いいんですか……?」
「えぇ……」
「よかったね、奈美先生」
「エリちゃん」
「あたしなら大丈夫だよ、先生。また明日ね」
「うん、ありがとうエリちゃん」
北島奈美はそのまま背中を見せると、薄暗い路地を商店街へと歩いていった。
それが奈美を見る最後の姿となった。

「さぁ、エリさん、家までお送りしましょう」
エマが大げさなポーズで頭を垂れた。
2人はそこから並んで歩き、エリのアパートまで歩いた。
「それではエリさん、わたしはここで」
「エマさん、本当にありがとうございました」
エマはニッコリ笑うと、エリに背を向け歩きかけた。そのエマがふと立ち止ま
りエリに向き直った。
「あのう、エリさん。総合公園はこっちでしたよね」
「はい、この道を真っ直ぐ行けば判ると思います。大きな公園ですから」
「そ、そうですか、ありがとう。それでは……」
エマは照れくさそうに笑うと、エリの指差した道を歩いていった。
エリはエマが見えなくなるまで、その姿をずっと見送っていた。


エリのストーカーの件が解決した翌日。事務所でカレーうどんを食べるエマの
携帯が鳴った。携帯には今回の依頼主の名前が映し出されている。
エマはニヤリと笑うと通話ボタンを押した。
「もしもし……」
「エマ? 今回はご苦労様」
「いえいえ、とんでもありません。これが仕事ですから」
「でも思わぬコトが続いて、あたしもびっくりしたわ」
「はい、すべては北島奈美を中心に起こったコトでした。大きな被害が出な
かったことが幸いでしたが……」
「えぇ、本当にこの程度で済んで良かったわ。やっぱりあなたにお願いして良
かった。本当にそう思っているの……」
「わたしも初仕事の依頼主があなたで光栄ですよ」
エマはリンダにも教えていない依頼主にそう言うと、ゆっくりと息を吸った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土