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あなたの燃える手で

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こちら夢の森探偵社

33
夢の森グランドハイツの910号室。
そのドアの前に1人の人影が立ち、その影がインターフォンを押した。
「はい……」
スピーカーを通し、室内から聞こえたのは低めの女性の声だった。
「あっ、若村です」
「あぁ、これはこれはエリさん。今鍵を開けます」
エマはエリを室内に招き入れると、応接室に通した。
「どうぞ、お掛け下さい」
革のソファに片手を伸ばし、エリを促した。
「何かお飲み物は……。麦茶でも入れましょうか、今日は少し暑いですから」
「いえ、おかまいなく……」
「まぁ、そうおっしゃらずに」
エマは一旦姿を消すと、麦茶を入れたグラスを持って現れた。それをエリの前
に置くと、自分も彼女の前に腰掛けた。
「今日はリンダの奴がいないもので……」
「それでストーカーの件なんですが……」
エリは膝の上で両手の指を組むと、早速用件を切り出した。
「はい、こちらでも色々調べて、判ってきたことが幾つかあるにはあります」
「そうなんですか」
「しかしエリさん。それはあなたにとって、嬉しい情報ばかりとは言えないで
しょう」
「はぁ……。そうなんですか?」
「えぇ、残念ながら、その内容を今ココで申し上げるワケにはいきません」
「はい」
「それで相談なんですが。明日……、お時間ありますか?」
「はい、大丈夫ですけど」
「それでは……」
エマはエリに、明日どうして欲しいかを話した。エリがその通りに動いてくれ
れば、早期解決に大いに期待できるとも言った。
エリはそれを承諾し、事務所を後にした。

翌日、エリはエマに言われたとおりの行動をした。
大学では全ての誘いを断るコト。バスで夢の森駅まで帰ってくるコト。携帯の
留守電に映画を見て帰る旨を入れるコト。夢の森シネマで映画を見るコト。映
画を見終わったら裏通りを歩いて帰るコト。
そして今、エリは映画を見終わり、夢の森シネマから出てきた。

小さな映画館を出ると、辺りはすでに暗くなっていた。
暗い裏通りを1人で10分ほど歩いた時、エリは後ろに人の気配を感じた。
ずっとポケットの中で握りしめていた携帯を出すと、エリはエマに掛けた。
「もしもし、エマさん、あたしです。あの今、今、あたし……」
「エリさん、落ち着いて。大丈夫です。ワザと遠回りをして、総合公園まで歩
いてきて下さい」
「総合公園?」
「そうです、わたしはそこいます」
「でも、総合公園までは15分は掛かりますけど」
「大丈夫、ストーカーはエリさんに危害を加えるようなコトはしません」
「本当ですか?」
「本当です。わたしが保証します。エリさん、私はあなたを支えるためにココ
にいるのですよ」
「エマさん……、判りました。総合公園ですね」
「そうです。携帯はそのまま切らないでください」
「はい……」
エリはそのまま携帯を耳に当て、エマに言われたとおりに総合公園へと歩みを
進めていった。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土