こちら夢の森探偵社
30
リンダが楓のホテルにいた時間、エリはストーカーに会っているという連絡を
エマに入れている。
と言うことは、やはり楓はストーカーではなかったのか?
エマがエリの元に駆けつけたとき、既にストーカーの姿はなかった。
つまり楓の容疑が晴れた訳だが、リンダは北島奈美のマークを続けていた。
その日リンダは奈美と同じバスで、夢の森駅西口ターミナルまで帰って来た。
奈美は駅前で30分ほどブラつくと、携帯を片手にターミナルへ戻ってきた。
奈美は携帯を耳に当て、幹線道路の横断歩道の端へと歩いていく。どうやら誰
かと話しているようだ。
奈美の立つ横断歩道の向こうには、夢の森商店街が見える。
リンダはターミルで、バスを待つフリをして奈美を監視していた。
そして5分後、白い高級車が奈美の前に止まった。その車の助手席越しに、学
長の雪柳琴美の横顔が見えた。
「あらっ? あれってもしかして……、学長……?」
ドアが開き、奈美がその車に乗った。学長の横顔に奈美の顔が重なると、車は
そのまま静かに走り去った。
リンダは監視をあきらめ、事務所への道を歩き始めた。
奈美を乗せた車はそれから1時間ほど走り、高速のインターチェンジ近くを
走っていた。前方には、SM設備のあることで有名なホテル『蝶』が見える。
「学長……」
奈美は琴美の顔を見た。
「もう判るでしょう。あそこよ」
多くの車が高速へと上っていく中、この車だけが脇道に逸れた。そして『蝶』
と書かれた赤いネオンの下を潜ると、地下駐車場へと乗り入れた。
車を降りるとフロントで鍵を受け取り、エレベーターに乗った。そして青い蝶
の書かれたドアを開けた。
「凄~い……」
中に入った奈美は、その作りに目を見張った。
5階にあるその部屋は、中世の古城に似せた作りになっており、壁や天井など
は全て剥き出しのコンクリートだった。
見れば壁には手枷と足枷の付いた木の十字架が、天井からは、フックの付いた
数本の鎖が滑車に繋がっている。
壁の隅には赤い蝋燭の載った燭台があり、その横には鞭が掛けてある。
床はフローリングで、別室にはベッドやバスルームも完備されている。
「良く出来てるだろう。ここは中世の拷問室だよ」
「拷問室……」
「そう、今夜はここでお前を思いっきり責めてやるからねぇ」
「まぁ、何だか怖いわ」
「さぁ、服をお脱ぎ」
琴美は奈美だけを全裸にすると、両手首に手枷を付け、天井から下がった鎖に
繋いだ。そして鎖をジャラジャラと引っ張った。
奈美の両腕が天井へと伸び、やがてつま先立ちになったところで鎖を壁のフッ
クに引っ掛けた。
そして壁から鞭を取ると、それを片手に奈美の回りをグルリと1周歩いた。
「それはそうと……、奈美、お前に聞きたいコトがあるんだけど……」
「えっ……?」
いつもとは違うその口調と声のトーンに、奈美の余裕が消えた。
「最近、学生に手を出してないかい?」
「そ、そんな……。あたしは……」
「あたしは、なぁ~に?」
「……」
「ウチの学生が奈美と一緒にいるところを見たって話があるのよ」
「そっ、そんなコト……、いったい誰が」
「その学生のアパートにも行ったんですってねぇ~」
「えっ」
「どうやら図星のようね、奈美」
「あたし……、そんなコト……」
「女の嫉妬が怖いのは……、知ってるわよねぇ」
琴美は革の1本鞭を、両手で一直線になるようにピンと引っ張った。
リンダが楓のホテルにいた時間、エリはストーカーに会っているという連絡を
エマに入れている。
と言うことは、やはり楓はストーカーではなかったのか?
エマがエリの元に駆けつけたとき、既にストーカーの姿はなかった。
つまり楓の容疑が晴れた訳だが、リンダは北島奈美のマークを続けていた。
その日リンダは奈美と同じバスで、夢の森駅西口ターミナルまで帰って来た。
奈美は駅前で30分ほどブラつくと、携帯を片手にターミナルへ戻ってきた。
奈美は携帯を耳に当て、幹線道路の横断歩道の端へと歩いていく。どうやら誰
かと話しているようだ。
奈美の立つ横断歩道の向こうには、夢の森商店街が見える。
リンダはターミルで、バスを待つフリをして奈美を監視していた。
そして5分後、白い高級車が奈美の前に止まった。その車の助手席越しに、学
長の雪柳琴美の横顔が見えた。
「あらっ? あれってもしかして……、学長……?」
ドアが開き、奈美がその車に乗った。学長の横顔に奈美の顔が重なると、車は
そのまま静かに走り去った。
リンダは監視をあきらめ、事務所への道を歩き始めた。
奈美を乗せた車はそれから1時間ほど走り、高速のインターチェンジ近くを
走っていた。前方には、SM設備のあることで有名なホテル『蝶』が見える。
「学長……」
奈美は琴美の顔を見た。
「もう判るでしょう。あそこよ」
多くの車が高速へと上っていく中、この車だけが脇道に逸れた。そして『蝶』
と書かれた赤いネオンの下を潜ると、地下駐車場へと乗り入れた。
車を降りるとフロントで鍵を受け取り、エレベーターに乗った。そして青い蝶
の書かれたドアを開けた。
「凄~い……」
中に入った奈美は、その作りに目を見張った。
5階にあるその部屋は、中世の古城に似せた作りになっており、壁や天井など
は全て剥き出しのコンクリートだった。
見れば壁には手枷と足枷の付いた木の十字架が、天井からは、フックの付いた
数本の鎖が滑車に繋がっている。
壁の隅には赤い蝋燭の載った燭台があり、その横には鞭が掛けてある。
床はフローリングで、別室にはベッドやバスルームも完備されている。
「良く出来てるだろう。ここは中世の拷問室だよ」
「拷問室……」
「そう、今夜はここでお前を思いっきり責めてやるからねぇ」
「まぁ、何だか怖いわ」
「さぁ、服をお脱ぎ」
琴美は奈美だけを全裸にすると、両手首に手枷を付け、天井から下がった鎖に
繋いだ。そして鎖をジャラジャラと引っ張った。
奈美の両腕が天井へと伸び、やがてつま先立ちになったところで鎖を壁のフッ
クに引っ掛けた。
そして壁から鞭を取ると、それを片手に奈美の回りをグルリと1周歩いた。
「それはそうと……、奈美、お前に聞きたいコトがあるんだけど……」
「えっ……?」
いつもとは違うその口調と声のトーンに、奈美の余裕が消えた。
「最近、学生に手を出してないかい?」
「そ、そんな……。あたしは……」
「あたしは、なぁ~に?」
「……」
「ウチの学生が奈美と一緒にいるところを見たって話があるのよ」
「そっ、そんなコト……、いったい誰が」
「その学生のアパートにも行ったんですってねぇ~」
「えっ」
「どうやら図星のようね、奈美」
「あたし……、そんなコト……」
「女の嫉妬が怖いのは……、知ってるわよねぇ」
琴美は革の1本鞭を、両手で一直線になるようにピンと引っ張った。