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あなたの燃える手で

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こちら夢の森探偵社

27
「こ、これですか。えぇっと……」
何故か口がうまく回らない。まるでヘビに睨まれたカエルのようだ。
「そちらは ”ドライフルーツとクリームチーズのサラダ” です」
Lがリンダをフォローするように言った。
リンダは完全にぎこちない笑顔で楓を見た。そして楓と目が合うとまるで怒ら
れた子供のようにペコリと頭を下げた。
赤い髪を揺らしてリンダが頭を上げると、そこに楓の優しい笑顔があった。
「可愛いわね、アナタ。よかったら一緒に飲まない?」
「あっ、は、はい。是非……」
リンダが革ジャンを反対側の椅子に移すと、楓がリンダの隣に移動した。
「あたしは楓って言うの。あなたは?」
「リンダです」
「リンダ……?」
「はい、あだ名ですけど……」
「あのう……」
Lが申し訳なさそうに口を挟んだ。
「あらっ、ごめんなさい。あたしはいつもの水割りとスロープシャーブルー」
「かしこまりました。こちらのサラダは……」
「やめとくわ、やっぱりいつものにしとく」
「そうですか」
Lが奥に行くと、リンダが楓に聞いた。
「スロープシャーブルーって?」
「塩分と青カビの匂いが強いチーズよ……。大人の味、かしら」
「はぁ、そうなんですか」
「ねぇ、そのサラダ一口頂戴」
「はい、どうぞ」
リンダはそれを皿ごと渡すとハイボールを一口飲んだ。
「うん、美味しいじゃない。ドライフルーツとクリームチーズだっけ? 作れ
そうで作れない味って感じね」
「あぁ、成る程。確かに……」
そしてLがカウンターに水割りとチーズを載せた皿を置いた。
「一口食べてみる? このチーズ」
「あっ、いいですか?」
「いいわよ、勿論」
リンダは香りの強いチーズを口に入れた。
「結構強烈ですね」
「それがクセになるんだけどね……」
その時、楓がトイレに立った。
リンダがその難敵をようやく飲み込んだとき、革ジャンの中で携帯が鳴った。

リンダが携帯を開くと、着信はエマからだった。
「どうしたんですか」
「リンダ、今何処だ?」
「今、あのバーですよ。1度は行きたいって言ってた」
「Bar MELLOW BLUEか……」
「そうです……」
「そうか、実は今、若村エリから連絡があった」
「えっ……、何かあったんですか?」
「彼女、今ストーカーに会っているらしい」
「今? 今って……、今ですか?」
「そうだ、今現在、後を付けられている」
「だってあたし今」
「もしかして、楓という女と一緒か?」
「はい」
「どうやら当てがはずれたなリンダ」
「若村エリはわたしが行く。お前はそのまま一杯やってろ」
「えっ、えぇぇ~!」
「仕方ないだろう。社会勉強だ、社会勉強だよリンダ」
「はぁ~い、それじゃ何かあったら連絡くださいね……」
「あぁ、君がミイラになっていなければ、きっと連絡はつくだろう」
そこで通話は切れた。
「もう、ミイラでも何にでもなってやるぅ!」
「えっ? ミイラがどうしたの?」
トイレから戻った楓が、怪訝そうな顔をしてリンダを見た。
「あっ、いえっ、何でもないです。何でも……」

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土