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あなたの燃える手で

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こちら夢の森探偵社

18
「あっ、あのう、こちらの方は……」
エリはリンダを見て少々驚いたようだ。
赤い髪にヘビメタの黒いTシャツ。爪は派手な色に飾り立てられ、おまけに今
日は、ジーンズからジャラジャラとチェーンがブラ下がっている。
そんな子が、麦茶を乗せたトレイを持って立っている。
「あぁ、助手のリンダです。こんな身なりですが。外見とは違って根は真面目
な奴なんです。なぁ、リンダ。そうだろう?」
「あのうエマさん。そこはリンダじゃなくて……」
リンダはトレイをテーブルに置き、麦茶のグラスをエリの前に置いた。
「こちらストーカー対策の件で依頼に来て下さった若村エリさんだ」
「こんにちは。林田 鈴です」
リンダ赤い頭をペコリと下げると、自分の名刺をエリの前に置いた。
「さっきからリンダって呼ばれてますけど、本名は林田で、リンダはあだ名で
すから。林田の "林" を ”りん” って読んでリンダ」
「そうなんですか……。あれっ……? 見習いなんですね。リンダさん」
「えっ、あっ、はい、そ、そうなんです。まだ経験不足でして……」
リンダは恨めしそうな目でエマを見た。
「あっ、それにリンダさん、林田をりんだって読めば、逆から読んでも "りん
だりん" ですね」
「えっ、まぁ、下の名前は鈴って書いて ”りん” ですから……」
「何かそんな曲がありましたよね、ブルーなんとかの、リンダリンダ~って何
度も叫ぶ歌」
「あはははっ、そうそう。ありました、ありました。エリさん面白いなぁ~」
エマが、らしくもなく大口を開けて笑っている。
「なんか凄くアウェーな気分ですよ、エマさん……」

エリはそれからストーカーについてのことを2人に話した。
いつ頃から始まり、今までに何回くらい、どこで、時間や被害など、記憶の限
りのことをエリは話し尽くした。
「そうですか。今のトコロ気配を感じる程度で、実害はない……。ということ
でよろしいですね」
「はい……」
「それはなにより……」
エマは立ち上がると舞台役者のように歩き、そして大げさな身振りと共に芝居
がかった口調で言った。
「まったくこんな可愛いお嬢さんストーカーするなんて、いったいどんな奴な
んだ。しかしご安心ください。このわたくしがスグに捕らえてみせます」
エリは目を輝かせてエマを見上げている。
「いつもあの調子なんです。あたしは ”どこでも歌劇団” って呼んでるんです
けどね。でも大丈夫、仕事はキチンとやりますから」
「いえっ、素晴らしい、素晴らしいですエマさん。わたしエマさんにお願いし
て良かったです」
「お任せ下さい。ストーカーなんぞ、このわたくしが……」
「えっ? エリさんもそっち側です? ……やっぱりアウェーだ」
「リンダさん、素晴らしい先輩をお持ちですね……」
「エリさん? 目が、目がキラキラに……」
「あたし、エマさんに全てお任せします」
エリは両手を胸の前で組み、まるで祈りを捧げる乙女のようなポーズだ。
そんなエリを正気に戻すように、リンダが言った。
「エリさん? こちらでも出来る限り調査はしてみます。取り敢えず携帯の番
号を教えて下さい。それから、私たちの番号も登録しておいてください」
「あっ、はい、わたしの番号は……」
エリは我に返ったようにリンダに目を戻すと、携帯番号を教えた。

エリが帰ると、リンダはエマと事務室の机に座った。
そこで彼女が北島奈美と 『Bar MELLOW BLUE 』にいたコトを話した。
「ほう、あの子が一緒に。それは興味深いな。それに北島奈美に紙を渡したと
いう、そのテーブル席の女も……興味がある」
「興味があるって、色々な意味に取れますけど、今はエマさんを信じます」
「とにかくMELLOW BLUEに行ってみるか……」
「それって行きたいだけでしょう? ホントはそうなんでしょう」
「そ、そんなコトはない。これは調査だ、調査」

その数日後。
リンダは夕暮れの街を、クイーンホリデーに向かう奈美を尾行していた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土