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あなたの燃える手で

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こちら夢の森探偵社

17
奈美と一夜を共にした数日後、エリはアマデウスに入った。
夏は過ぎた感があったが、店内はまだ僅かに冷房が効いている。
レジの脇にあるフリーペーパーを手に取ると、エリは窓際の席に座った。
ミニスカートから綺麗な脚を見せた、ボーイッシュな女の子が注文を取り来
た。バイトらしいがどっかで見た気がする。
「いらっしゃいませ……」
「アイスコーヒーください」
「アイスコーヒーを御一つ……、ですね」
彼女は注文を繰り返すと、厨房へと姿を消した。
「あの子……、確か夢女の……? まぁ、いいか」

エリはテーブルに置いたフリーペーパーを手にすると、『夢の森の仲間たち』
というタイトルに目を走らせた。

それは文字通りこの街のタウン誌で、裏表紙にはこの街が可愛い絵地図になっ
て描かれている。
5ページ程しかないそのタウン誌の表紙を捲ると、公共機関や『夢の森病院』の診療時間が、更にページを捲ると『夢の森シネマ』の上映案内、『クレオパ
トラ』というエステの割引コースが紹介され、商店街の特集ページにはこの店
も載っている。メンバー募集ページには、趣味のサークルなどが載っていた。
そんな中で、エリはある広告に目を止めた。

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ー夢の森探偵社ー
 素行調査、浮気調査、家出人捜し、裁判の証拠収集、ストーカー対策 等。
 今日の不安を明日の安心に。愛の疑問解決します。
 誰かを憎むその前に、あなたをしっかり支えます。
 光あふれる明日のために。
  代表:本上エマ EMA HONJO
  所在地:夢の森グランドハイツ910号室
  TEL~  FAX~
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「ストーカー対策かぁ……。どうしようかなぁ?」
さっきのバイトの子が、エリのテーブルにアイスコーヒーを置いた。
「アイスコーヒーです。ごゆっくりどうぞ……」
「ありがとう。あのぅ……」
「はい?」
「もしかして、夢女……?」
「はい、あたし夢女ですけど……。あなたも?」
「えぇ、どっかで見たことあるなぁと思って……」
「響子っていいます」
「あっ、エリです」
「うふっ、エリちゃん可愛い。今度学校で一緒にお昼でも食べようよ」
「うん、是非是非」
何故か妙に馬が合う。しかし忙しいのか、響子は厨房へと戻っていった。


そしてその日、エリはグランドハイツ910号室のチャイムを押した。
静かにドアが開くと、中から金髪をカチカチに固め、黒いスーツに身を包ん
だ、長身の女性が姿を見せた。
「若村エリさんですね。どうぞお入り下さい」
「は、はい……」
真っ直ぐに目を貫く視線に、エリは心まで貫かれたような気分になった。
「リンダ、リンダ、お客様だ。お茶を頼む」
エマは奥に声を掛けると、エリに向き直った。
「さぁ、どうぞっ、こちらへ」
エマは応接室のドアを開けた。そしてドアボーイのような姿勢で片手を室内へ
と伸ばし、エリを招き入れた。

エリとエマは、ガラスのテーブルを挟んで向かい合った。
「時間には正確なようですね。約束した時間のピッタリ5分前だ」
「あっ、はい……」
「そういう人、わたしは好きですよ。何より信頼が置ける。それはこれからの
私たちの関係において大変重要なコトです。あっ、申し遅れました。わたし」
そう言ってスーツの内ポケットから名刺を出し、エリに渡した。
「この探偵社の代表を務めております、本上エマと申します」
「若村エリです。よろしくお願いします」
エリがペコリと頭を下げる。

その時ドアがノックされ、リンダが麦茶をトレイに乗せて入ってきた。
「あっ……」
リンダの脳裏に、『Bar MELLOW BLUE』で北島奈美と一緒にいた、彼女の
記憶が蘇った。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土