白い魔女
11
院長如月真弓の突然の登場にゆかりは慌てて立ち上がり、自己紹介をした。
「どうぞ、お掛け下さい」
真弓は右手を差しのべるようにして、ゆかりを促した。
ゆかりは今日までに揃えておくように言われた書類一式と、献体依頼書と書かれた用紙をその上に置くと真弓に差し出した。
真弓は右手に赤いボールペンを持ってそれらの書類に黙って目を通すと、顔を上げてゆかりを見つめた。
「早速ですが、今回あなたがここにいらしたと言うことは、” 献体として我々にその体を差し出す覚悟がある ” と見なされるわけですが、よろしいですか?」
「はい」
ゆかりはうつむき加減で頷いた。
「後で契約書に署名、捺印してもらいますが、契約が成立した瞬間からゆかりさん、あなたは私達の管理下に置かれることになります」
「はい」
「それでは、いくつか確認させていただきますね。まず、献体の意味は今も言ったように我々、といっても主にこの私にですが、その体を差し出すという意味です。平たく言えば、何をされても構わないと言うことですが……この意味も勿論?」
「はい。わかっています」
「そうですか、そしてあなたが献体として体を差し出す代わりに、私があなたの借金を全て肩代わりしてお支払いします。金額は二千万。そこから土地家屋を売った分を差し引いて残り五百万。これで間違いありませんね」
「はい、間違いありません」
「契約後は基本的にこの病院の敷地内から出ることは出来ません。それからあなたがここに献体としていることは、私と御堂の他は誰も知りません。あなたは特別室の入院患者として私の治療を受けているという事になっています。勿論その費用も私が負担します。特別室、そこがあなたの普段の居場所になります」
「はい」
「それから、あなたの現住所、住民票の移動当は全てこちらでやりますからご安心を。世間的にはあなたはどこかへ引っ越して暮らしている、ということになっています。郵便物もあなたに全て届きます。だだしここに居ることは誰にも言ってはいけません」
「はい、勿論です」
「育ちも良さそうで、礼儀もきちんとわきまえていらっしゃいますね。見たところ締まった体つきをしているようだけど何かスポーツでも?」
「はい、学生時代に水泳をしていました。でも今はもう見る影もありません」
「そんなことないわ。十分良い体に見えるけど」
「そうですか。ありがとうございます」
十分良い体……真弓はこれからのことを思うと、内心ほくそ笑んでいた。
院長如月真弓の突然の登場にゆかりは慌てて立ち上がり、自己紹介をした。
「どうぞ、お掛け下さい」
真弓は右手を差しのべるようにして、ゆかりを促した。
ゆかりは今日までに揃えておくように言われた書類一式と、献体依頼書と書かれた用紙をその上に置くと真弓に差し出した。
真弓は右手に赤いボールペンを持ってそれらの書類に黙って目を通すと、顔を上げてゆかりを見つめた。
「早速ですが、今回あなたがここにいらしたと言うことは、” 献体として我々にその体を差し出す覚悟がある ” と見なされるわけですが、よろしいですか?」
「はい」
ゆかりはうつむき加減で頷いた。
「後で契約書に署名、捺印してもらいますが、契約が成立した瞬間からゆかりさん、あなたは私達の管理下に置かれることになります」
「はい」
「それでは、いくつか確認させていただきますね。まず、献体の意味は今も言ったように我々、といっても主にこの私にですが、その体を差し出すという意味です。平たく言えば、何をされても構わないと言うことですが……この意味も勿論?」
「はい。わかっています」
「そうですか、そしてあなたが献体として体を差し出す代わりに、私があなたの借金を全て肩代わりしてお支払いします。金額は二千万。そこから土地家屋を売った分を差し引いて残り五百万。これで間違いありませんね」
「はい、間違いありません」
「契約後は基本的にこの病院の敷地内から出ることは出来ません。それからあなたがここに献体としていることは、私と御堂の他は誰も知りません。あなたは特別室の入院患者として私の治療を受けているという事になっています。勿論その費用も私が負担します。特別室、そこがあなたの普段の居場所になります」
「はい」
「それから、あなたの現住所、住民票の移動当は全てこちらでやりますからご安心を。世間的にはあなたはどこかへ引っ越して暮らしている、ということになっています。郵便物もあなたに全て届きます。だだしここに居ることは誰にも言ってはいけません」
「はい、勿論です」
「育ちも良さそうで、礼儀もきちんとわきまえていらっしゃいますね。見たところ締まった体つきをしているようだけど何かスポーツでも?」
「はい、学生時代に水泳をしていました。でも今はもう見る影もありません」
「そんなことないわ。十分良い体に見えるけど」
「そうですか。ありがとうございます」
十分良い体……真弓はこれからのことを思うと、内心ほくそ笑んでいた。