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あなたの燃える手で

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Lost Memory

02
「はい! どうぞっ……」
白い自動ドアが音もなく横に滑ると、そこに白衣を着た2人の女性が現れた。
「おはよう、メイ。具合はどう?」
「具合って、あたしは病気じゃないわ。……あぁ、ごめんなさいリラ。あたし
なんだかイライラしてて……、挨拶まだだったわね」
「いいのよ、気にしないで……。紹介するわ、メイ」
リラの後ろから、白衣を着た背の高いもう1人の女性が姿を見せた。
「今日からあたしと一緒にあなたを担当することになった、Dr イリメラよ」
「初めましてメイ。ご機嫌はいかがですか」
今のやりとりを後ろで聞いていた彼女は、機嫌が傾いているであろうメイを怪
訝そうな目で見た。
「初めまして、Dr イリメラ。メイです。よろしくお願いします」
「ドクターなんてやめて、イリメラって呼んでちょうだい」
「あぁ、はい……。イリメラ」
イリメラは表情を和らげると、メイの両肩に手を置いた。
「大丈夫よ、メイ。あなたの記憶は必ず戻る。あたしが戻してみせるから」
「ありがとう、イリメラ……」
2人はそのままハグをし、そして固い握手を交わした。
その様子を見ていたリラが2人に歩み寄った。
「これからはあたし達がタッグを組んで、治療を進めて行くことになったの」
「えぇ……」
「それでイリメラと話し合ったんだけど、明日から今までの治療方法から少し
方向転換することになったわ」
「方向……転換……?」
「そう、薬物治療と平行して、ショック療法を取り入れてみようと思うの」
「ショック療法?」
「ショック療法と行っても、何も心配することはないのよ」
「でも……何だか怖いわ」
「大丈夫よ。痛いことなんか何もないんだから。ねぇ、イリメラ」
リラはベッド脇のサイドテーブルに赤いPCを置いた。
「そうね、記憶回復への新たなアプローチと考えて欲しいわ」
「ここの設備は世界最新、いえっ、最高と言ってもいいわ」
「そりゃ、あたしとしても……、記憶は取り戻したいけど……」
「この治療で必ず何か突破口が見つかると思うの。是非協力して! メイ」
メイは背中に当たる南風が、少し冷たく感じ始めていた。
「それじゃ治療内容の説明をするわね。」
リラはベッドの端に腰掛けると脚を組んだ。スラリとした脚が白衣の下から覗
く。そしてノートPCを開くとそのディスプレイに視線を移した。
「いい? メイ。まず……」
「えっ、待って、あたしはまだ……」
「あたし達にまかせて。頑張りましょう、メイ」
そう言ってメイを見つめるイリメラの後ろに、あのパステル画の雨と赤い傘が
見える。記憶の奥に何かを呼びかけるようなあの絵。
「そうね、やってみるわ」
「ありがとう、メイ。全て取り戻しましょう」
リラがベッドから立ち上がり、メイとハグをした。
「頑張りましょう、メイ」
そして2人の横で微笑んでいたイリメラが、リラにその視線を向けた。
「治療内容の説明をしてあげて……」

メイは大まかな説明をリラから受けた。それはとてもリラックスした雰囲気の
中、短時間で切り上げられた。

「それじゃ明日の午後2時に……、今日はゆっくり休んでね」
「頑張りましょう、メイ」

2人が退室すると自動ドアが静かに閉まり、部屋に静寂が訪れた。

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女が女をじっくりと、生殺しのまま犯していく。その責めに喘ぎ仰け反る体。それは終わり無き苦痛と快楽の序曲。     
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更新日:日・水・土